省エネ適判への備え方

 その後、国土交通省建築環境企画室長の山下氏と日経BPインフラ総合研究所の小原隆上席研究員がパネリストに加わり、国土技術政策総合研究所建築研究部長の澤地氏をモデレーターにディスカッションを行った。ディスカッションは、澤地氏が各パネリストに省エネ適判への備え方を尋ねる形で始まった。

国土交通省国土技術政策総合研究所建築研究部長の澤地孝男氏(写真:清水 盟貴)
国土交通省国土技術政策総合研究所建築研究部長の澤地孝男氏(写真:清水 盟貴)
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 最初に、小堀氏に向け「住宅・建築物省CO2先導事業に採択された建物の設計をし、その後3年間の実測もしている。独自に環境配慮の工夫を凝らした建築物は、省エネ適判になじむか」と質問した。小堀氏は、「例えば、最終的に開口部に採用したガラス製品などは必ずしも設計時とは同じものにならないことがある。外皮の性能値は設計段階と施工段階でそれぞれ確認する必要がある」と回答した。

小堀哲夫建築設計事務所代表の小堀哲夫氏(写真:清水 盟貴)
小堀哲夫建築設計事務所代表の小堀哲夫氏(写真:清水 盟貴)
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 次に高井氏には「省エネ計画通りにつくられているかを証明するために、使用した建材などのエビデンス(証拠)を蓄積するのは大変か」と質問。高井氏は、「図書や書類を保管するなどして、工事完了検査まで省エネ基準をフォローすることは大切。そのうえで、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)のレベルをにらみ、性能の高い建物をつくっていくことが重要と考える」と話した。

竹中工務店設計本部プリンシパルエンジニア(環境担当)の高井啓明氏(写真:清水 盟貴)
竹中工務店設計本部プリンシパルエンジニア(環境担当)の高井啓明氏(写真:清水 盟貴)
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 杉山氏には「工事監理は省エネ適判に関わる仕事の中で最も大切な部分。どのように進めていくのか」と尋ねた。杉山氏は、「省エネ建築として手本となりそうなものをつくっていく。そのためにもまずは、手間がかかるという印象を払拭しつつ、手順を踏んで省エネ基準をクリアする建物を実現することが大切だろう」と述べた。

日建設計執行役員・エンジニアリング部門監理グループ代表の杉山隆氏(写真:清水 盟貴)
日建設計執行役員・エンジニアリング部門監理グループ代表の杉山隆氏(写真:清水 盟貴)
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 木下氏には「ガラスメーカーは新たにガラス建築確認記号をラベルに記載するなどの対応をしているが、情報提供の整備は間に合うか」と質問した。木下氏は、「新たに加わったガラス建築確認記号や、住宅性能評価・表示協会の温熱・省エネ設備機器等ポータルサイト(非住宅)の情報などは追って、各メーカーのカタログにも掲載していきたい。まずはウェブサイトの対応を先行し、ポータルサイトと各メーカーのリンクを図る予定だ」と説明した。

板硝子協会建築委員会建築環境ワーキンググループの木下泰斗氏(写真:清水 盟貴)
板硝子協会建築委員会建築環境ワーキンググループの木下泰斗氏(写真:清水 盟貴)
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 設計一次エネルギー消費量の算定方法は、詳細な計算を行う「標準入力法」と、建物用途ごとに設定したモデル建物を用いる「モデル建物法」がある。髙橋氏には、モデル建物法についての解説が求められた。「省エネ計算は現在、外注しているケースが多いと聞く。4月以降、申請後の設計変更などで、急な省エネ計算を要する場合もある。対応するために、モデル建物法による省エネ計算の内製化も検討してはどうか」と回答した。

日本ERI省エネ推進部副部長・経営企画部専門部長の髙橋彰氏(写真:清水盟貴)
日本ERI省エネ推進部副部長・経営企画部専門部長の髙橋彰氏(写真:清水盟貴)
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