「性能表示で他社との違いを出す」

 ローソンは17年2月、コンビニエンスストア業界で初めてBELSの5つ星を取得した店舗をオープンした。その狙いについて、開発本部建設部シニアマネジャーの樋口智治氏は次のように話す。「まずはモデル店舗でどのくらいの省エネ性能を持たせることができるのか、検証したかった」。

 その対象となった東京都小平市の新店舗は、性能の高い設備機器に太陽光発電を組み合わせ、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)を実現した。「フランチャイズチェーン(FC)本部としてオーナーに燃費のいい建物を店舗として提供できるかどうかが大事。現状では、地主に対して出店を提案する際、競合他社とは価格競争に陥りがちなので、こういった環境配慮に取り組んでいるという要素によって他社との違いを出せればいい」。

ローソン開発本部建設部シニアマネジャーの樋口智治氏(写真:清水真帆呂)
ローソン開発本部建設部シニアマネジャーの樋口智治氏(写真:清水真帆呂)
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 このように様々な分野で取り組みが進んできた省エネ性能表示制度だが、さらなる普及促進の必要性も各氏から訴えられた。

 リクルート住まいカンパニーの池本洋一氏は、住宅・不動産の物件情報を検索できるポータルサイト「SUUMO(スーモ)」の編集長でもある。「SUUMOをはじめとする3社の住宅・不動産ポータルサイトでは、BELSについて表示できるようにした。ただし、まだ全国的に物件数が多くないので、BELS認証物件だけを絞り込んで検索することはできない。一定量の普及が見込まれればすぐに対応することはできるのだが…」。

 池本氏がBELS普及のカギに挙げたのは建て売り住宅だ。「新築戸建てでは供給の過半数を建て売り住宅が占めている。低コストで大量供給するというビジネスモデルなので、コストと手間がかかるようではなかなか積極的にならないはず。この課題をいかに克服するか、国と業界の全体で考えていく必要がある」。

 さらに、「BELSによって価値が上がる、高く売れる、という方向で訴求しないほうがいいのではないか。普及を第一に考えるなら、『BELSによって差別化ができて他の物件よりも早く売れる』ということを立証したほうが、事業者や供給者にはメリットに感じられるはず」と提言。これには、モデレーターの田辺教授も「実際に欧州では、省エネ性能が優れた物件のほうが早く売れるという研究結果がある。面白い」と身を乗り出した。

リクルート住まいカンパニー SUUMO編集長の池本洋一氏(写真:清水真帆呂)
リクルート住まいカンパニー SUUMO編集長の池本洋一氏(写真:清水真帆呂)
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