「顧客にメリットがあればいい」

 「BELS取得によって顧客にもメリットがあるといい」。こう提言したのは、マンションデベロッパーの大京(東京都渋谷区)の建設管理部商品開発課主任の内田麻衣子氏だ。同社は「ライオンズ広島加古町」でマンション初のBELSを取得し、その後も3件のマンションで認証を受けている。

 「当社でBELSを取得しているのは、低炭素建築物認定のマンションのみ。低炭素建築物の場合、顧客に対して税制優遇が受けられるというメリットをアピールできる。もし、BELSだけでも何らかの経済的なメリットを顧客にもたらすことができるようになれば、低炭素建築物の物件以外にも認証を受ける動きがもっと広がるはず」。

 同社では独自のパッシブデザインの仕様もプランに取り入れている。「通風などの工夫でどれくらい電気代の節約になるか、具体的な数字を顧客に提示している。これについても、BELS表示マークに目安の金額を添えられるようになると、より効果やメリットが伝わりやすいのではないか」と提案する。

大京建設管理部商品開発課主任の内田麻衣子氏(写真:清水真帆呂)
大京建設管理部商品開発課主任の内田麻衣子氏(写真:清水真帆呂)
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 一方、非住宅の分野ではBELSはどのような効果をもたらすのか。日本生命保険では、保険料の運用先として投資用の賃貸ビル313棟と自社使用ビル867棟を全国に保有している。不動産の長期的な維持、付加価値の向上という観点から、15年度で5件、16年度で11件、BELS評価を取得している。

 日本生命保険不動産部専門部長(建築技術)の高原浩輔氏は、「賃貸ビルのテナントに対し、改修後の省エネ性能を説明するのに適している」と話す。「ただし、改修後のビルにBELSマークを表示しても、それを見たテナントが省エネ性能を評価して契約が決まるかというと、まだそこまでの効果はない」とも言う。

 オフィスビルでは性能を向上させるためのコストは住宅よりも大きくなる。「認証の手間やコストもかかる。投資効果を考えると、費用対効果のバランスを考慮して取り組むことになる」。髙原氏はこのように本音を語る。

日本生命保険不動産部専門部長(建築技術)の高原浩輔氏(写真:清水真帆呂)
日本生命保険不動産部専門部長(建築技術)の高原浩輔氏(写真:清水真帆呂)
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