2017年4月1日から建築物省エネ法の適合義務が施行される。特定建築物の新築や増改築は省エネ基準への適合義務を負うほか、建築確認、完了検査と関連付けられる。適合義務の取り扱いを中心に、同法のポイントを解説する。今回は、容積ボーナスがもらえる性能向上計画認定などについて。

<<建築物省エネ法を徹底解説(2)省エネ適判後に設計変更したら?

 次に、誘導措置として位置付けられた性能向上計画認定と基準適合認定・表示制度について説明する。

 建築物の新築や増改築の際、誘導基準に適合した高い性能を持つと所管行政庁から判断された場合、性能向上計画認定を受けられる。同認定の取得は任意で、認定取得に際しては所管行政庁に申請する。

性能向上計画認定の流れ
性能向上計画認定の流れ
(資料:国土交通省の資料を基に作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 同認定を取得した場合、省エネ性能を向上させる設備の設置面積のうち、通常の建築物の床面積を超える部分を延べ面積の10%を上限に容積率算定の際に不算入にできる。

 容積率特例の対象となる省エネ性能を向上させる設備とは、(1)太陽熱集熱設備・太陽光発電設備 (2)燃料電池設備 (3)コージェネレーション設備 (4)蓄熱設備 (5)蓄電池 (6)全熱交換器など。

 同認定は、住宅・非住宅のいずれも対象となる。前述した床面積の不算入を目的とした建築物全体の認定のほかに、融資や補助制度を活用するために共同住宅における特定住戸部分のみの認定や、非住宅部分のみの認定なども行える。

 性能向上計画認定を受けるには、以下の(1)から(3)が条件となる。

  • (1)誘導基準を満たす省エネルギー性能
  • (2)基本方針(国土交通省告示第609号)に照らして適切な計画
  • (3)適切な資金計画

 (1)については、非住宅・住宅にかかわらず外皮性能と一次エネルギー消費量の基準への適合が求められる。ただし、16年4月1日にすでに存在していた建築物については、外皮性能に関する基準は除外される。

 外皮性能の基準は、現行省エネ基準と同水準だが、下の表にあるように、一次エネルギー消費量については、BEIが0.8(住宅は0.9)以下であることが求められる。

省エネ適合性判定はBEIが指標となる
省エネ適合性判定はBEIが指標となる
※1 住宅の一次エネ基準については、住棟全体(全住戸+共用部の合計)が表中の値以下になることを求める
※2 外皮基準については、2013年基準と同等の水準(資料:国土交通省の資料を基に作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 性能向上計画認定の申請に際しては、前述の(1)から(3)が確認できる図書を、所管行政庁に対して工事着手までに提出する。内容は届け出と同様の図面類だ。

 性能向上計画認定を受けた建築物が、省エネ適合性判定の対象である場合、適合判定通知書の交付を受けたものとみなすことができる。同様に性能向上計画認定を受けた建築物が届け出の対象であった揚合、届け出をしたものとみなすことができる。ただし、上記のいずれも建築物の部分として性能向上計画認定を受けた場合は、適用されないこともあるので注意が必要だ。

 なお、誘導基準への適合確認については、登録省エネ判定機関などが交付する技術的審査適合証などを活用することも考えられる。申請を行う際には建設地の所管行政庁で、適合証の活用の可否について確認を行うことが必要だ。