建築ブームで人材不足

 ドイツ国内の新築・リフォーム需要は近年上昇しており、施工速度の向上と人材不足のカバーが業界全体のテーマとなっている。キーワードの「施工が速く」と「ミスをしにくい」は各建材や設備のキーワードとなっており、様々な工夫が見られる。気密材を例に挙げると、使用する向きや粘着部分が誰でも一目でわかりやすいことや、くぎに引っかかっても破れないシートといったものを各メーカーが市場に出してきている。

床暖房用のチューブをホッチキスのような工具で固定できるシステム。下地となるパネルはカッターでカット可能。リフォーム用にも使われている(写真:永井宏冶)
床暖房用のチューブをホッチキスのような工具で固定できるシステム。下地となるパネルはカッターでカット可能。リフォーム用にも使われている(写真:永井宏冶)
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チューブにマジックテープが巻かれており、パネルに張り付くようになっているものもある(写真:永井宏冶)
チューブにマジックテープが巻かれており、パネルに張り付くようになっているものもある(写真:永井宏冶)
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石こうボードに組み込まれた壁面暖房パネル。施工の速さを追求した製品の一つ(写真:永井宏冶)
石こうボードに組み込まれた壁面暖房パネル。施工の速さを追求した製品の一つ(写真:永井宏冶)
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 BAUミュンヘンにはドイツ以外の40か国以上からもメーカーが出展している。今回の展示会では、旭化成建材が調査目的でネオマフォームを展示した。日本国内でも発表されたように、同商品ではλ値0.018W/mKの性能も可能となり、ヨーロッパ市場でもトップの断熱性能を誇る。今回は、来場者がどういった反応を示すかを見る機会となった。ブースでは、ウレタン系よりも優れた断熱性能や難燃性に興味を示す業界人が押し寄せていた。

旭化成建材のブース。不利な立地にも関わらず数多くの来場者が製品について様々な質問をしていた(写真:永井宏冶)
旭化成建材のブース。不利な立地にも関わらず数多くの来場者が製品について様々な質問をしていた(写真:永井宏冶)
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 最先端という点では、ドイツの国土交通省にあたる環境建設省が主催している、プラスエネルギーネットワークシンポジウムで、日本の低燃費住宅(高松市)の高松プラスエネルギーハウスが唯一の国外事例としてパネル展示され、専門家の注目を集めていた。

 プラスエネルギーハウスネットワークは、環境建設省が約40のモデルプロジェクトで実測値を分析し、技術開発や省エネ基準を改正する際の判断材料として、必要な情報を収集する目的で開設された。世界的に著名なフラウンホーファー建築物理研究所が分析を担当しており、定期的に研究結果の発表を行っている。

ドイツの最先端事例に並んで展示された低燃費住宅の高松プラスエネルギーハウスのパネル(写真:永井宏冶)
ドイツの最先端事例に並んで展示された低燃費住宅の高松プラスエネルギーハウスのパネル(写真:永井宏冶)
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 BAUミュンヘンは、2年ごとの開催になり、業界の全貌をつかむには適している。特化した製品を見る場合には、窓、ブラインド、設備、塗料など、各部材ごとに専門の展示会が別に開催されているため、そちらに足を運んでもいい。

 製品の開発速度が極めて速いことは驚きに値する。これは、メーカーの中でもオーナー経営が多いために判断が速いことや、分業化が進んでいるために各パーツに対して集中して開発されること、業界が少数の大手独占体制ではないため、中小規模のメーカーが製品開発に注力していること、などがその要因として挙げられる。

 次回のBAUミュンヘンは、19年1月14日から同19日までの開催が予定されており、展示スペースも20万m2に拡張される予定だ。それまでの間にも、専門性の高い展示会で新たな製品が次々と発表される可能性は高い。