ガラスだけで躯体並みの断熱性

 見た目と厚みの両方をスマートにしたいという設計者の希望をかなえるために、ガラスだけで高い断熱性能とデザイン性が得られるという建材も登場している。こうした建材は、厚みが断熱3層ガラスと同じ程度となっていること、同時に開口部でもあるため、ファサードが薄く透明感も演出できる。

 ガラスだけで高断熱の躯体と比較できるほどのU値を達成できるからくりは、透明のガラス部分が4層になっていること、半透明部分は中に真空断熱材が入っているところにある。大型パネルでの製造が可能なため、継ぎ目が少なく、デザイン性の高い設計が可能となる。

透明、半透明のデザインや割合は自由に選択できる。BAUミュンヘンでの展示モデルはUg値0.36W/m2Kで厚みは59mm。最高でUg値0.23W/m2Kまで可能(写真:sedak GmbH & Co. KG)
透明、半透明のデザインや割合は自由に選択できる。BAUミュンヘンでの展示モデルはUg値0.36W/m2Kで厚みは59mm。最高でUg値0.23W/m2Kまで可能(写真:sedak GmbH & Co. KG)
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最大で3.2m×16mまで1枚のパネルとして製造可能。内側、外側ともセラミックカラーを使用したデジタルプリントで、設計者が思うままにデザインできる(写真:sedak GmbH & Co. KG)
最大で3.2m×16mまで1枚のパネルとして製造可能。内側、外側ともセラミックカラーを使用したデジタルプリントで、設計者が思うままにデザインできる(写真:sedak GmbH & Co. KG)
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 パネルや断熱材を使用しない断熱方法として、断熱コートも進化を続けている。断熱コートは、最大で150mm程度まで厚みを持たせて塗ることができる断熱性能を持った漆喰(しっくい)として、組積造や鉄筋コンクリート(RC)造の、特に曲線などを含む部分の断熱に使用されるケースが多い。

 ドイツで流通してきた従来型の断熱コートは、熱伝導率(λ値)0.070W/mK程度の製品が主流となっていたが、近年ではλ値0.030W/mKを切る製品も販売されている。超高性能の製品は、特に断熱材を取り付けにくい箇所で使用される。基本的には機械での吹き付け施工が多く、リフォームでも作業が速く進行するため、高価な超高性能でないものであればコスト減にもつながる。

λ値0.055W/mKの断熱コート。30~120mmでの施工が可能。特殊成分による高性能ではなく、細かい気泡が中に発生するようになっているため、比較的安価。完全不燃、機械による高速施工が可能であることも特徴だ(写真:永井宏冶)
λ値0.055W/mKの断熱コート。30~120mmでの施工が可能。特殊成分による高性能ではなく、細かい気泡が中に発生するようになっているため、比較的安価。完全不燃、機械による高速施工が可能であることも特徴だ(写真:永井宏冶)
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