2種類のラベリングを活用

 表示制度は、省エネ基準への適合を所管行政庁などが認定すると、その旨を建築物や広告に表示できるというもの。省エネ性能の優れた建築物が市場で適切に評価される環境整備が狙い。

 表示は、販売・賃貸事業者の表示の努力義務(法7条)と、所有者の基準適合認定・表示(法36条)の2種類。

 法7条の販売・賃貸事業者を対象とした制度については、省エネ性能表示ガイドライン(告示)において、住宅/非住宅、新築/既存の共通の表示方法を定めている。具体的には、第三者認証と自己評価の別、一次エネルギー消費量の基準値からの削減率、一次エネルギー消費量基準や外皮基準への適合可否などの表示となる見込み。

 自己評価で表示を行う場合は建築研究所のウェブプログラムで計算し、一次エネルギー消費量基準と外皮基準の適合可否を示す。同プログラムは16年4月以降、省エネ性能表示ガイドラインに基づく表示内容を出力できるように改変する予定だ。

 第三者認証の場合、住宅性能評価・表示協会が制度運営をしているBELS(ベルス、建築物省エネルギー性能表示制度)を利用する。BELSは、14年に国土交通省が評価基準を定めた省エネルギー性能を評価する公的制度で、新築/既存建物の双方を対象に、一次エネルギー消費量をもとに第三者機関が省エネルギー性能を評価し、5 段階の星マークで表示する。現状では非住宅が対象だが、16年4月から住宅版BELSも開始する。

 ガイドラインにおいては、広告など表示スペースの制約を受ける場合の表示方法も検討している。評価年月日、第三者認証か自己評価かの別、一次エネルギー消費量からの削減率の3点のみを必須で表示するようになる見込み。

建築物省エネ法7条による第三者認証。基準レベル以上の優れた省エネ性能を表示する。新築だけでなく既存建築物でも活用可能。第三者認証(BELSを想定)、あるいは自己評価で表示できる。適合性判定(2000m2以上)、届け出(300m2以上2000m2未満)、誘導基準認定(容積率特例)の申請書類(一次エネルギー消費量算定結果)を用いてBELSラベルを取得し、★の数で表示する(資料:国土交通省)
建築物省エネ法7条による第三者認証。基準レベル以上の優れた省エネ性能を表示する。新築だけでなく既存建築物でも活用可能。第三者認証(BELSを想定)、あるいは自己評価で表示できる。適合性判定(2000m2以上)、届け出(300m2以上2000m2未満)、誘導基準認定(容積率特例)の申請書類(一次エネルギー消費量算定結果)を用いてBELSラベルを取得し、★の数で表示する(資料:国土交通省)
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数値はBEI。BEI=設計一次エネルギー消費量(OA機器、家電など分を除く)÷基準一次エネルギー消費量(OA機器、家電など分を除く)(資料:国土交通省の資料をもとに作成)
数値はBEI。BEI=設計一次エネルギー消費量(OA機器、家電など分を除く)÷基準一次エネルギー消費量(OA機器、家電など分を除く)(資料:国土交通省の資料をもとに作成)
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 法36条の建築物の所有者を対象とした表示制度は、既存建物が省エネ基準に適合しているか否かを一般の利用者などに分かりやすく伝えることが目的。通称は「eマーク」。

 建築物の所有者は、建築物が省エネ基準に適合すると行政庁の認定を受けた場合、その旨を建築物や敷地、広告、契約書などに表示できる。この制度を利用し、建築物の所有者が省エネ改修を行い、テナントなどにアピールすることを期待している。

 なお、eマークの表示内容は基準適合への有無のみ。具体的な性能を訴求したい場合は、前述した法7条に基づくBELSなどを活用する。

建築物省エネ法36条による行政庁認定。既存建築物が基準適合していることを所管行政庁が認定する。省エネ改修を行い、基準適合した場合も表示できる。通称は「eマーク」(資料:国土交通省)
建築物省エネ法36条による行政庁認定。既存建築物が基準適合していることを所管行政庁が認定する。省エネ改修を行い、基準適合した場合も表示できる。通称は「eマーク」(資料:国土交通省)
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