中大規模木造建築の魅力と課題
近藤(桧家ホールディングス):私は、中大規模木造建築の魅力と課題ということで、シンプルに箇条書きで整理してきた。
まず、構造が美しい。これは木造建築の何よりの魅力で、他の構造にはない魅力だろう。それに対して、防耐火規制というハードル、ネックが存在する。
そして本来、木造というのは低コストであるはずなのだが、残念ながら現状はS造やRC造と変わらないか、それよりも高い。
また、木造・木質建築が環境に優しいということはみなさんご存知だが、一方であまりメリットが感じられないという現状がある。
われわれが実地研究で訪れた岩手県でもそうだったが、地産地消、地域で木材をつくって地域で使うことができる。また「地造」と記したが、地域の工務店でつくれるという良さがある。一方ではまだまだ設計や施工のノウハウがあまりないという現状がある。
ほかにも癒し効果を含めて木造にはいろいろな効果があるわけだが、このような現状の課題に対して、私は2つの解決策を考えてみた。
1つは「オープン工法化の推進と業界団体の設立」だ。まだ中大規模建築または中高層の木造建築については、どのようにつくっていいのか、どのように設計していいのかが一般には知られていない。特殊なものとして捉えられており、オープン化できていない。これを住宅のようにいわゆる在来工法化、オープン工法化することによって、部材のコストダウン、設計・施工のノウハウの共有を図っていくことが、まず必要なのではないかと考える。
そのためには、設計者、施工者、部材メーカー、デベロッパー、自治体などの関わる人たちが参画する業界団体のようなものを設立して連携を図っていく必要があるだろう。住宅については日本木造住宅産業協会があるが、このような団体が一つの見本となるのではないだろうか。
大事なことは、木造建築の魅力をどう情報発信していくかだ。そうした意味でもこのような団体を通して、あまねく発信していくという機能が求められるのではないだろうか。
これから将来を担う子どもたちに対して、木造の良さについての情操教育についても必要だ。木造の建物を小さい頃から見て使い、そして「木造の建物っていいな、何か安心感があるな」という気持ちを植え付けるという意味では、学校、保育所、幼稚園などに木を積極的に使っていくことも重要だと考える。
2つ目は「環境配慮インセンティブの制定とPR」だ。みなさんは木が環境に優しいことはわかっているが、すぐにメリットがないのが障壁になっている。木を使っても誰も評価してくれない。
そこで、まずは木造・木質化を進める設計者、施工者、発注者を評価することが考えられる。さらには、木造建築に入るテナントも評価するような制度をつくってはどうだろうか。
このようなものに対して、いわゆる補助金や税制優遇などの手法がよく用いられるが、これは事業者にとってはありがたいが、どうしても一過性になり、かつ当事者にしか認知されない。エンドユーザーの市民や企業には関係ないとされ、伝わらないというデメリットがある。環境問題は関わる事業者だけではなく、一般の人々にいかに広めるかが重要だろう。
したがって、木造についての統一したラベリングなどをつくる。時間はかかるかもしれないが、木造の環境に優しい建築に携わっている企業であることについて、世の中の人々から評価されていく社会をつくりだすことが求められるのではないだろうか。