防耐火関連規定の緩和措置

竹中工務店 木造・木質建築推進本部副部長 小林道和 氏(写真:菊池一郎)
竹中工務店 木造・木質建築推進本部副部長 小林道和 氏(写真:菊池一郎)
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小林(竹中工務店 木造・木質建築推進本部):中大規模木造となると、おのずと防耐火関連規定が求められる。そこで、その緩和措置についてヒントと合わせて示せればと考える。

 木造に限らず、市街地大規模建築物、人が多く集まる特定建築物には、人命、財産を守るために厳しく防耐火規定が求められる。この構造制限については、よく目にするだろうが、防火地域、準防火地域、法22条地域で耐火建築物が求められる範囲だ。

 この耐火建築物を緩和する方法というのは、2つある。1つ目は通称「別棟扱い」と言われる法律の運用に関するものだ。もう1つは、建築基準法が改正され、延焼を防止する壁等を用いると、耐火建築物が準耐火でできるというものだ。今日はこの2つの方法について整理する。

防火地域規制による構造制限(資料:竹中工務店)
防火地域規制による構造制限(資料:竹中工務店)
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防耐火関連規定の緩和とその適用のヒント(資料:竹中工務店)
防耐火関連規定の緩和とその適用のヒント(資料:竹中工務店)
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 「別棟扱い」は、以下に示す通り、1951年当時の建築防災課長の通達だ。2008年に、技術的助言として引き続き有効と通知が出されたので、これを使った設計が多くみられる。適用範囲としては赤のハッチで示したところだが、防火地域であれば3000m2以下、準防火地域でも3000m2以下、この辺りが適用範囲になってくる。

 「別棟扱い」のポイントについては、緑色で示した部分が準耐火構造で、オレンジの部分、3m幅以上の耐火構造を設けることで分ける。各々の境界には耐火構造の壁を設ける。通路にあたる箇所には特定防火設備を設けるというルールを守れば、耐火建築でなくて、準耐火建築での建築が可能になる。ただし、部分ごとに防火地域規制、建築用途、規模、構造制限に従う必要がある。これらについては、計画に合わせて調べる必要がある。

「別棟扱い」による緩和適用1(資料:竹中工務店)
「別棟扱い」による緩和適用1(資料:竹中工務店)
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「別棟扱い」による緩和適用2(資料:竹中工務店)
「別棟扱い」による緩和適用2(資料:竹中工務店)
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 この「別棟扱い」の適用事例は、先に紹介されたオガールプラザだ。耐火構造(RC造)の壁を入れることによって、耐火建築物を回避して、準耐火で実現された事例となる。

「別棟扱い」適用事例:オガールプラザ(資料:竹中工務店)
「別棟扱い」適用事例:オガールプラザ(資料:竹中工務店)
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 2つ目の方法、建築基準法第21条第2項の、壁等による緩和だ。公共建築物木材利用促進法が制定・施行され、その取り組みのひとつとして法律が改正された。簡単に言うと、3000m2を超える建物、それを壁等で区切ればそれは耐火建築物でなく、準耐火でもできるということだ。ただし、3000m2を越えて壁等で分割しても、防火地域、準防火地域では耐火建築物が求められる。この点には、注意する必要がある。

 法21条第2項の適用のポイントは、屋根仕上げには不燃材料を用いる。壁タイプとコアタイプといったものが設定されているので、使い分けをする。壁等と壁以外の建物はエクスパンションジョイントでしっかり分離するよう求められる。

 また、外壁面から突出するか、一定区間の防火措置が必要となる。さらに、壁等の区画部分は不燃材料かダンパーが必要である。壁等の設け方については、壁が突出するタイプ、コアタイプなどがある。こうした方法を用いて3000m2以上のものでも、準耐火で計画が可能になる。

「法21条第2項」による緩和適用1(資料:竹中工務店)
「法21条第2項」による緩和適用1(資料:竹中工務店)
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「法21条第2項」による緩和適用2(資料:竹中工務店)
「法21条第2項」による緩和適用2(資料:竹中工務店)
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「法21条第2項」による緩和適用3(資料:竹中工務店)
「法21条第2項」による緩和適用3(資料:竹中工務店)
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 15年に私も委員として参加し、文部科学省が策定した「木の学校づくり-木造3階建て校舎の手引-」という冊子がある。こちらにこの法律を使った事例が紹介されているので、ご覧いただきたい。

 最後に1つだけ付け加えたい。耐火建築物と準耐火建築物では性能がおのずと違う。耐火建築物を回避することによってやはり耐火性能は劣るものとなる。

 視察で住田町役場に伺った時に、「防災拠点として使える」とのことだったが、準耐火建築物で計画されていることに違和感があった。そこで、設計者に確認したところ、スプリンクラーを設置して耐火性能を高めていると回答があった。このように、設計者はしっかりと建物に求められる性能を加味したうえで防災計画を含めて検討を行ってほしい。

設計者は耐火建築物と準耐火建築物の違いをきちんと捉える(資料:竹中工務店)
設計者は耐火建築物と準耐火建築物の違いをきちんと捉える(資料:竹中工務店)
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小原(日経BPインフラ総合研究所):防耐火の緩和規定には、「別棟扱い」と「法21条の壁等」があるということだ。実務者としての経験のなかで、全国どこでも適用できるものなのか教えていただきたい。

小林(竹中工務店 木造・木質建築推進本部):示した資料は指定建築確認検査機関の担当者に聞いて整理したものだ。ただし、やはり個別には建築確認を出す建築主事の判断になる。計画の際に主事とよく相談して、どのように運用が適用されるのか確認してほしい。

小原(日経BPインフラ総合研究所):ありがとうございます。では最後に、内海さんから発表していただく。