CLT、木質耐火部材、JAS制度

林野庁 木材産業課 住宅資材技術係長 原章仁 氏(写真:菊池一郎)
林野庁 木材産業課 住宅資材技術係長 原章仁 氏(写真:菊池一郎)
[画像のクリックで拡大表示]

原(林野庁木材産業課):私からは3つ話題を提供させていただく。1つ目がCLT(直交集成板)に関する動向、2つ目が木質耐火部材に関する動向、最後にJAS制度についてだ。

 まずCLTについて。こちらは直交集成板と日本では呼ばれている。ひき板を繊維方向が直交するよう積層接着した重厚なパネルで、壁や床などに使って構造部材、パネルとして使うのに適している。日本では、製材会社の社員寮や低層のホテルなどで実績がある。2016年4月に「CLTを用いた建築物の一般設計法」の告示が公布・施行された。これまでは、構造計算をして国土交通大臣の認定を取らないと建てられなかったものが、告示化された内容に合致すれば、建築確認のみで建てられるようになった。

CLT(直行集成板)とは(資料:林野庁)
CLT(直行集成板)とは(資料:林野庁)
[画像のクリックで拡大表示]
CLTを用いた建築物の一般的な設計法の策定(資料:林野庁)
CLTを用いた建築物の一般的な設計法の策定(資料:林野庁)
[画像のクリックで拡大表示]

 CLTの活用が先行している海外では、住宅、オフィスビル、ホテルなどで実績が多くある。欧州では2015年の生産量は約50万m3で、2020年には75万m3ぐらいになると言われる。実際に建っている事例としてはイタリア・ミラノで9階建て、ドイツで5階建てなど、中高層建築でも用いられるようになっている。

海外におけるCLTの建築事例について(資料:林野庁)
海外におけるCLTの建築事例について(資料:林野庁)
[画像のクリックで拡大表示]
海外におけるCLTの建築事例について(資料:林野庁)
海外におけるCLTの建築事例について(資料:林野庁)
[画像のクリックで拡大表示]

 2つ目に、木質耐火部材について紹介する。1998年に建築基準法の性能規定化が始まり、これによって必要な耐火性能を満たせば、木造であっても耐火建築物として4階以上の建物を建てられるようになった。民間による研究開発が進み、耐火被覆型や燃え止まり型などいろいろな手法による木質の耐火部材が開発されている。耐火1時間であれば上から4層まで、4層を超えると2時間の耐火性能が必要になる。現在、1時間の耐火の壁については告示化がされており、一般にもだいぶ普及してきた。

 今後は、2時間耐火についても、大臣認定の取得など技術開発は進んでいくものと考えている。こうしたなか、日本でも近年徐々に耐火木造建築が建てられるようになってきた。

木質耐火部材の開発について(資料:林野庁)
木質耐火部材の開発について(資料:林野庁)
[画像のクリックで拡大表示]
近年建設された耐火木造の事例について(資料:林野庁)
近年建設された耐火木造の事例について(資料:林野庁)
[画像のクリックで拡大表示]

 3つ目は、JAS規格制度についてだ。建築基準法の指定建築材料については、JASやJISに適合したもの、または大臣認定を受けた材料である。LVL、CLTなどの指定された材料のみではあるが、JASやJISの規格に合ったものを使うのが原則だ。JASについては、建築部材に限らず、製材などの品質について定めており、それぞれ製品を格付けする。

JAS規格制度の概要(資料:林野庁)
JAS規格制度の概要(資料:林野庁)
[画像のクリックで拡大表示]

 JAS認定工場の工場数については、グラフに示す通りで、製材が圧倒的に多くなっている。2×4製材と普通の製材を合わせると半分以上となる。ただし、品目別の格付数量については、近年は合板が最も多く、次が集成材、そして製材の順番になっている。認定工場数に比べると、製材の格付量は少ない。品目別の格付率の推移についても、やはり製材が10%前後と少なく、集成材、合板は高い割合となっている。

JAS認定:品目別認定状況(工場数)(資料:林野庁)
JAS認定:品目別認定状況(工場数)(資料:林野庁)
[画像のクリックで拡大表示]
JAS認定:主な品目別の格付数量の推移(資料:林野庁)
JAS認定:主な品目別の格付数量の推移(資料:林野庁)
[画像のクリックで拡大表示]
JAS認定:主な品目別の格付率の推移(資料:林野庁)
JAS認定:主な品目別の格付率の推移(資料:林野庁)
[画像のクリックで拡大表示]

小原(日経BPインフラ総合研究所):原さん、ありがとうございました。林野庁として木造建築の普及に取り組んでおられるが、世界のなかでの日本の木造建築の地位やボリュームについてはどのようにお考えか。

原(林野庁):感覚的にはまだまだ取り組みは少ない。ただ、法令で性能を規定化して十数年経っているので、これからどんどん増えていくことを期待したい。

小原(日経BPインフラ総合研究所):これから林野庁もバックアップして、国内の木造建築を増やすという方向になる。みなさんも、ぜひご協力いただきたい。では次に、中大規模木造プレカット技術協会の藤田さんからお話しいただく。