接着界面は品質管理が重要になる

 先に挙げた3つの要素のなかで、いちばん心配なのは接着界面だ。接着耐久性が1000年は保持されると結論付けられないのは、接着界面における強度発現の機構が明らかになっていないからだ。接着界面は木材と接着剤を合わせて貼る、人間が介在する作業部分に当たる。接着の信頼性を担保するためには、当然、接着操作がばらつくリスクを避けなければならない。

【接着界面】
木材接着におけるファイブリンクモデル(資料:「集成材建築物設計の手引」(日本集成材工業協同組合編著)67ページの図を基に編集部が作成)
木材接着におけるファイブリンクモデル(資料:「集成材建築物設計の手引」(日本集成材工業協同組合編著)67ページの図を基に編集部が作成)
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製造基準と品質管理(例えばJAS規格)

  • 木材の調整(含水率、表面仕上げ)
  • 接着剤の調整(混合率、塗布量)
  • 硬化(温度、湿度、時間)
木質材料の接着信頼性を揺るがす可能性があるのは、接着操作部分である
(資料:宮武敦氏の資料を基に編集部が作成)

 まず木材の調整。板材(ラミナ)の含水率を管理し、表面を平滑に仕上げてそこに接着剤を塗ることで性能が発揮される。これを、きっちりできるかどうか。

 接着剤の調整も重要だ。硬化剤と混ぜるタイプのものであればきちんとした比率で混ぜられているか、接着剤がきちんと塗布されているか。そうしたこともリスクになり得る。

 接着剤が硬化する条件、温度、湿度の調整も重要だ。きちんと守られないと、接着剤の性能が発揮されないことがある。

 このようなリスクを避けるために製造基準や品質管理を公的に決めているのがJAS規格だ。工場における製造時の基準があり、使用する場合の品質管理の基準がある。こうしたことが守られて、接着界面の信頼性は初めて担保できる。

 接着耐久性については、「集成材建築物の設計の手引き」(日本集成材工業協同組合編著・大成出版)に寄稿しているので、そちらを参照して頂きたい。