中高層建築物の構造や内装で木材はどこまで使えるのか。その点を考えるうえでカギを握るのが木造建築物の防耐火性能だ。4階建て以上の共同住宅など都市型木造建築物の構造設計・防火設計で多くの実績を積む一方で、木造3階建ての学校建築の耐火要件の見直し、準耐火構造などの告示のバリエーション追加検討といった技術・研究開発にも関わってきた桜設計集団代表の安井昇氏は、木質の構造部材に耐火被覆を施す「被覆型」が木造耐火建築物の主流であると指摘し、「木は簡単には燃え広がらない」と断言する。
私は、木造の意匠設計とともに、木造の防耐火の研究を行っている。
今日は、既に木造の耐火建築物が幾つも実現しているということを紹介したい。
4階建て以上の建物は耐火建築物にすることが定められている。春日部市にある「埼玉県東部地域振興ふれあい拠点施設」は6階建ての庁舎だ。下の4層は鉄骨造で、上の2層が木造という混構造だ。下層階には大空間のホールがあり、スパンを長く飛ばさなければならないため、鉄骨造にしている。一方、上層階は執務用の小さいスペースが並ぶため、木造としている。
4階以上の建物では耐火要件がかかり、上から4層は1時間耐火が求められる。そのため木の構造材には石こうボードを貼っている。構造躯体は木造であるものの、石こうボードに隠れて木材は見えない状況になっている。
木質パネルは意匠としてだけではなく、耐震パネルになっている。ブレースの役割を果たし、地震の時にはこれが抵抗する。ブレースには必ずしも耐火被覆が要らないので木質材を露出させている。火事に遭えば木質ブレースは燃えるが、火事と地震は同時には起こらないというのが建築基準法の考え方なので、それに対応している事例だ。