木造建築には、CO2排出量を抑制し、エネルギー効率を高めた不動産という特徴がある。このような性能が積極的に市場で評価されるようになれば、中高層木造建築の促進に結びつく可能性がある。こうした「環境不動産」は実際に市場でどのように評価されてきたのか。評価の動きが進むには何が欠かせないのか。環境不動産の促進に力を入れて活動している三井住友トラスト基礎研究所投資調査第1部上席主任研究員の西岡敏郎氏に問題提起してもらった。

三井住友トラスト基礎研究所 投資調査第1部上席主任研究員 西岡 敏郎氏
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三井住友トラスト基礎研究所 投資調査第1部上席主任研究員 西岡 敏郎氏

 はじめに私と「環境不動産」との関わりをお話しする。環境不動産という言葉自体が分かりづらいかもしれない。10年以上前に、気候変動やCO2削減の問題などが持ち上がり、国連などから、不動産が環境を阻害する要因になっているという議論が起こった。それに対して、不動産業界や金融業界はどのように対処できるかという観点で議論が始まった。

 不動産から出されるCO2をどうやって削減するか、電気を有効に使うためにはどうすればよいか、エネルギー効率をどう引き上げるかなど、かなりテクニカルな議論が行われた。日本においては、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)の構築で対応してきたということになるだろう。

 こうした議論がここ10数年あり、国土交通省でも環境不動産の委員会・ワーキングが立ち上がった。私も最初の頃と昨年の2回、委員会・ワーキングに委員として参加させていただいた。今年の委員会はまだ始まったばかりだが、主たるテーマとしては「グリーンリース」を取り上げるようだ。「グリーンリース」とは、エネルギー効率を上げるための賃貸借契約をどのようにするかというもの。不動産の貸し手とテナントの両者間で、より環境に優しい賃貸借契約を結んでやっていこうという議論を行っている。