中高層木造建築を進めていくには、不動産市場における木造のとらえ方、評価が重要になってくる。ファンド、REITなどは木造建物を資産としてどのように評価しているか。木造では減価償却の期間が短く設定されていることから、資産としての評価にも違いが出てくる。第1回研究会で、委員から出されたこのような意見・疑問について、青山リアルティー・アドバイザーズの代表取締役副社長で不動産鑑定士の服部毅氏に解説してもらった。

青山リアルティー・アドバイザーズ代表取締役副社長 服部毅氏
青山リアルティー・アドバイザーズ代表取締役副社長 服部毅氏
[画像のクリックで拡大表示]

 本日は「鑑定評価、減価償却の考え方と投資家の思考法」についてお話しする。

 最初に、鑑定評価の考え方。次に、減価償却の考え方。最後に、償却をメリットと考える投資家とデメリットと考える投資家がいる、という話に触れる。

 鑑定評価では、「建物およびその敷地」を考える。ある土地に建物が建っているということを評価の対象にするわけだが、不動産の鑑定評価では、木造であれ非木造であれ、特に基準が異なるわけではない。

 鑑定評価基準上では、「建物およびその敷地」は、「自用の建物およびその敷地」と「貸家およびその敷地」の2つのパターンに大きく分けられる。「自用の建物およびその敷地」は、土地・建物の所有者、利用者すべてが自用、つまり同一人物である場合。「貸家およびその敷地」は、土地建物は同一所有者であるがそれを賃貸で供している場合だ。

 この「建物およびその敷地」の不動産鑑定評価基準には、A「積算価格(原価法)」とB「比準価格(取引事例比較法)」、C「収益価格(収益還元法)」の3つの手法がある。

 これら3手法を関連づけて、鑑定評価額を決定する。

 ただし、実務上ではBの取引事例比較法を適用するケースはほとんどない。海外では複合不動産の取引事例比較法を適用する例は多いが、日本においてはほとんど使われない。なぜなら、ビル同士を比較する際に、地域性だけでなく建物のスペックや用途、貸家の場合は賃貸借契約の内容など、個別性も比較対象とするからだ。日本では、取引事例比較法はビル同士の格差づけをなかなか精緻にはできないと考える事情がある。

 REIT不動産投資法人が購入するときには、鑑定評価を取ることが法律上も定められている。その不動産鑑定評価書では、原価法と収益還元法の2つの手法をもって評価を行っているケースがほとんどだ。