木材活用の機運が高まるなか、建築物の設計・施工、発注に携わる実務者は、木造・木質建築にどのような経験や関心を持ち、そのメリットや普及への課題をどのように考えているのか。また、実際に木造・木質建築を企画する際にどのようなことが阻害要因となると考えているか。日経アーキテクチュア・ウェブ会員へのアンケート調査の結果から読み解いてみる。
建築物の構造・工法の選定者
「施主主導」が32.7%、「設計・施工側主導」が67.3%。建築物の構造・工法は、建築の専門家である設計・施工側の提案に沿って決まることが多いことが分かる。
木造・木質建築への関わり
木造・木質建築について「経験あり」が74.6%、「関心あり」が22.3%。「経験・関心ともなし」は3.2%にすぎなかった。
木造・木質建築のメリット
建築実務者が感じている「木造」と「木質」のメリットの違いを比較した。15項目で比較すると、木質より木造の方が総じてそのメリットが認識されていた。
木造に感じている最も高いメリットは、「健康への配慮が演出しやすい」(65.5%)。同様に木質では「材質感が高く、建築物の高級感が演出できる」(48.5%)だった。
木造と木質でメリットと感じる差が最も大きかったのは「建築物を軽量化できる」で、31.6ポイント差。次いで「地元産材を利用することで地域経済に貢献できる」、「健康への配慮が演出しやすい」が20ポイント台後半の差があった。
木質のメリットが木造を大きく上回ったのは「テナント側からの関心がある」で、15.3ポイント差だった。
木造・木質建築の普及への課題
建築物で木材を活用していくうえでの課題について尋ねたところ、「耐火性能が低い」「耐震・耐火面での法規制が多い」「施工できる人材が不足している」との回答が多く、それぞれ約4割を占めた(複数回答)。
木造・木質化の実現を阻んだ要因
建築物を木造・木質で企画したものの、実現に至らなかったプロジェクトについてその要因を尋ねたところ、最大のネックは予算だったことが分かった。低層住宅、低層非住宅、中高層建築のそれぞれで、「予算感が見合わなかった」は4割を超え、設計・建築確認段階で「コストを精査したところ、予算に収まらなかった」も3割を超えた。
【調査概要】
- 調査主体=日経BPインフラ総合研究所
- 実査=日経BPコンサルティング
- 調査目的=建築物の設計・施工実務者および発注者が、建築物への木材の利用についてどのような経験・イメージを持っているか、木材を利用した建築物において企画から施工までのプロセスのどの部分に阻害要因が発生しやすいかなどを把握する
- 調査対象=日経アーキテクチュア・ウェブ会員のうち、設計事務所、工務店・ハウスメーカー、ゼネコン・サブコン、デベロッパーの勤務者
- 調査方法=インターネット調査
- 有効回収数=507件
- 調査時期=2016年5月10日~5月29日