アラップのコーク事務所が示した代替案
WELL認証には、AAP(Alternative Adherence Path)と呼ばれる、要求事項に対する代替案の提案制度がある。上記の「アクティビティ・インセンティブ」については、従業員1人当たりに240ドルのフィットネスジム費用の提供を求めるものだが、アラップでは社内規定に抵触するため、社内で開催するサッカー、ラグビー、ボートレース、ボルダリングなどの活動を代替案とした。
また、「可動式家具の導入」については、WELLでは30%のデスクを可動式にする必要があるが、予算の関係で導入できなかった。代替案は、休憩コーナーカウンターや腰高の家具の上などにノートパソコンを持ち込んで立って仕事ができるというものだ。
いずれも審査の結果を待っており、これが通ればアイルランドで初のWELL認証プロジェクトとなる予定だ。
他のWELL関連の動きとしては、米国の企業・Delosは、Mayo Clinicと共に、ミネソタ州にWELL Living Labという実験施設を作り、データを集めている。騒音、空気質、といった個別の研究とその影響についてはたくさんの研究論文があるが、実際のワークスペースは様々な要因が重なりあっている。
例えば、窓を開けて換気したいが、道路に面していて騒音が激しい場合はどうすべきだろう?それらを実証することが目的だ。2016年5月から始まったこの実験のデータが、今後より詳細に分析されるとのことで、結果がどう反映されていくのか楽しみである。
WELL認証はオフィスを対象として作られたが、現在では店舗、集合住宅、教育施設、レストラン、業務用厨房、ジム、空港、コンベンション・センター、スタジアムなどへ対象が広がってきている。
「健康」はこれまでも大きな関心の的であったが、個人によるところが大きかった。働き方の問題や経済産業省が推進する「健康経営」と相まって、今後WELL標準は日本でも認識が広まっていくことだろう。