建築は「環境」から「健康」へ

 日本におけるCASBEE、米国発のLEED、英国のBREEAMなど、各国で建築の環境性能を測る指標が用いられるようになり、すでに定着した感がある。

 一方で、米国では「環境への配慮に偏り過ぎ、そこで生活や労働をする“人”への視点が欠けていたのではないか」という反省も起こっている。LEEDよりも人の健康に着目していると言われる米国のLBC認証(Living Building Challenge)でも、健康関連の要求事項は全体の約50%である。

LEEDやBREEAMなどの環境性能評価制度にどれくらい健康関連の評価点が含まれているかの比較(資料:Arup Associates)
LEEDやBREEAMなどの環境性能評価制度にどれくらい健康関連の評価点が含まれているかの比較(資料:Arup Associates)
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 また、業種にもよるが、経営コストの大部分を占めるのは人件費や福利厚生関連の支出であると言われ、約90%にもなるとの統計がある。経営側から見れば、人件費という莫大な投資に対して従業員の生産性をより高めてリターンを得たいところだ。そして、我々の生活の時間の中で約90%は屋内で過ごすというデータもある。だから今、人の健康と建築の関係が注目されているのだ。

経営コストの大部分を占めるのは人件費や福利厚生関連の支出であると言われている。建築業界でも、ウェルネスや健康が、意思決定に影響を与えるようになると考える人が増えている(資料:Arup、出典:Health Survey for England 2012, Health and Social Care Information Centre, McGRAW HILL CONSTRUCTION, 2014)
経営コストの大部分を占めるのは人件費や福利厚生関連の支出であると言われている。建築業界でも、ウェルネスや健康が、意思決定に影響を与えるようになると考える人が増えている(資料:Arup、出典:Health Survey for England 2012, Health and Social Care Information Centre, McGRAW HILL CONSTRUCTION, 2014)
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