質の高い移動体験を提供する
2017年1月に開通してから、利用者は増え続け、MTAによると17年5月の月間利用者は17万6000人になった。混雑の激しかったレキシントン・アベニュー線の混雑や遅延は26%減り、特に朝のラッシュアワーのそれは40%減ったそうだ。
また、国際会計事務所グループのKPMGがまとめた報告書によれば、IND2番街線のフェーズ1の完成による経済効果は、30年までに2億6540万ドルに上ると試算されている。この背景には、移動時間の短縮、交通渋滞の削減、交通事故の減少、CO2排出量の削減、生産性の向上などが挙げられている。
そして、周辺の土地の価値は47億ドル上昇するということだ(4駅の周辺から半径800mの範囲で、10%価格上昇すると想定)。
このような数値的なこととともに、個人の利益に着目してみると、通勤などの移動時間の削減は、ワークライフバランスの改善にも貢献すると考えられている。また、駅に設置されたWi-Fi、NYの歴史の中でもっとも贅沢なパブリック・アートだと言われる著名な作家による現代アートの作品の数々、明るい空間や安全性を考えた通路など、これらが相まって、質の高い移動体験を提供できる、とMTAは自信を持っている。
1980年代~90年代前半、ニューヨークの治安は最悪で、特に地下鉄は危険だと言われていた。薄暗く駅構内も車両も落書きだらけだった。ではこの新しい地下鉄駅はどうだろう?世界のどこの都市にでもありそうで、ニューヨーク特有さを示すものは無いかもしれない。しかし、これからは快適な移動体験が、ニューヨークのシンボルとなっていくのかもしれない。
プロジェクト概要
- クライアント: Metropolitan Transportation Authority Capital Construction (MTACC), New York Transit Authority (NYTA)
- 初期設計・コンサルタント: AECOM-Arup JV