来館者がキュレーターになる

 スイッチ・ハウスの空間は、展示スペースと動線部分の境界が曖昧になっている。それは、ここを訪れた個々人が自らキュレーターとなって、思うままの順番で作品を見てもらい、さらに動線部分やニッチなどの、本来展示用ではないスペースを活用することによる思いがけない効果をもたらす場とすることが目的である。

 それはまさに、サウス・バンクという地区そのものを見るようである。倉庫街だった場所にある発電所の遺構を再利用した美術館ができ、新たな産業遺産の活用の仕方にも世界中の人々が興味を持った・・・。思いがけない組み合わせが新しさを生むことがある。

2000年にオープンしてから、周辺では開発が進んだ。立ち並ぶガラスファサードの建物とテート・モダンの外観は、好対照となっている(写真:Paul Carstairs)
2000年にオープンしてから、周辺では開発が進んだ。立ち並ぶガラスファサードの建物とテート・モダンの外観は、好対照となっている(写真:Paul Carstairs)
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プロジェクト概要

  • 発注者: Tate
  • 設計者: Herzog & de Meuron
  • その他協働者: Ramboll UK, Max Fordham LLP, AECOM, Vogt Landscape Architects, Mace
  • 火災安全設計、照明デザイン: Arup
  • 総工費:約2億6000万ポンド(約334億円)
菊地 雪代(きくち・ゆきよ)
菊地 雪代(きくち・ゆきよ) アラップ東京事務所アソシエイト/シニア・プロジェクト・マネージャー。東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻修了後、設計事務所を経て、2005年アラップ東京事務所に入社。一級建築士、宅地建物取引主任者、PMP、LEED評価員(O+M)。アラップ海外事務所の特殊なスキルを国内へ導入するコンサルティングや、日本企業の海外進出、外資系企業の日本国内プロジェクトを担当。