全フロアを貫通するオープン階段

 アラップは、照明デザインと火災安全設計を担当した。

 照明デザインについては、テート側から「サスティナビリティーに関して先導的な役割を担うこと」と要望があり、一般的なギャラリーと比較して、エネルギー消費量を20%削減している。スポットライトにはLEDランプを使用し、一般的に使われてきたハロゲンランプに比較してエネルギー消費量を半分に抑える。もちろんアート作品を照らす照明の質は落としていない。

スイッチハウスの夜景。照明にはLEDランプを使用しているイギリスの環境性能評価制度であるBREEAMにおいて“Very Good”の認証を受けた。周辺環境にも配慮した照明計画となっている(写真:Paul Carstairs)
スイッチハウスの夜景。照明にはLEDランプを使用しているイギリスの環境性能評価制度であるBREEAMにおいて“Very Good”の認証を受けた。周辺環境にも配慮した照明計画となっている(写真:Paul Carstairs)
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 火災安全設計については、計画の初期段階から議論に参加し、人命を守るとともに高価なアート作品を保護するための戦略を練ってきた。

 建築の見所の1つは、「バーチカル・ブルーバード」と名付けられた、地下の展示室から最上階のバーをつなぐオープン階段である。通常であれば、延焼と煙の広がりを避けるために、階段室は壁で区切る必要があるが、テートとアラップは、11層の各階の使い方や、火や煙の広がり方を検証。建物利用者がどのように避難するかをコンピューターで解析し、複雑な意匠デザインを実現する火災安全設計を行った。

 施工段階でも火災安全設計のエンジニアが積極的に関与し、多様な仕上げ材料などを検証しながら、火災安全設計の意図が反映されていることを確認していった。

既存の躯体を補強する斜めの柱。また、床スラブと壁面の隙間に、2~3層の吹き抜け空間をつくり出している(写真:Paul Carstairs)
既存の躯体を補強する斜めの柱。また、床スラブと壁面の隙間に、2~3層の吹き抜け空間をつくり出している(写真:Paul Carstairs)
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