2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、特に新築の施設整備が話題になるが、「施設の完成=五輪の準備完了」、ではない。五輪という特殊なイベント用に、ゲートやテントなど、「オーバーレイ」と呼ばれる仮設物の設営が必要となる。このオーバーレイが大会運営に影響することは想像に難くない。2012年のロンドン五輪の事例を、プロジェクト・マネージャーが解説する。(菊地 雪代/アラップ)

 リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックが終わり、4年後には日本で56年ぶりに夏季五輪が開催される。リオ五輪では会場準備の遅れから開催が危ぶまれており、2018年冬季五輪の開催地である韓国・平昌(ピョンチャン)でも同様の事態が懸念されている。東京五輪・パラリンピックでは同じ轍を踏まぬよう、万全を期することがますます求められるであろう。

 東京五輪に向けては会場整備費の高騰が話題になっているが、この費用の一部を占めるのが開催時のみ設置される仮設物だ。会場はそのままの状態で使用されるわけではなく、フェンスやゲート、テントなど様々な仮設物を設置することで施設は大会モードに転換される。これらの仮設物は総称して「オーバーレイ」と呼ばれる。開催コストや運営効率はオーバーレイの計画と密接に関係しており、昨今ではその重要性が高まっていると言える。

英国・ロンドンのオリンピックパーク。ロンドン五輪では、約20万の観客席、約1万の仮設トイレ、合計122kmにもおよぶフェンスがオーバーレイとして設置された(写真:Arup)
英国・ロンドンのオリンピックパーク。ロンドン五輪では、約20万の観客席、約1万の仮設トイレ、合計122kmにもおよぶフェンスがオーバーレイとして設置された(写真:Arup)
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