ケース2: 五輪に向けて新築される会場

 ロンドン五輪では、大会に向けてメーンスタジアム、アクアティクスセンター、自転車競技会場であるベロドロームなどが建設された。五輪向けに施設を新築する場合、大会組織委員会だけでなく、イベント後の施設所有者(および運営者)の意向も理解したうえで最も効率的なオーバーレイデザインを導き出すことが必要であるため、そのプロセスはさらに複雑なものとなる。

 また建設段階においては建築工事とオーバーレイ工事の領域の設定が必要となるが、これに当たっては各施工者の施工区分や引き渡し方法などについて事前に理解を完全に一致させておくことが重要となる。

ロンドン五輪のアクアティクスセンター。左右の羽の部分は五輪開催時の座席数1万7500を確保するために設置された仮設観客席であり、大会後には撤去されている(資料:Arup)
ロンドン五輪のアクアティクスセンター。左右の羽の部分は五輪開催時の座席数1万7500を確保するために設置された仮設観客席であり、大会後には撤去されている(資料:Arup)
[画像のクリックで拡大表示]

ケース3: 大規模仮設による会場

 夏季五輪で最も大規模な屋外仮設を必要とする競技の1つがビーチバレーボールである。東京五輪ではお台場の潮風公園での開催が予定されている。ロンドン五輪ではバッキンガム宮殿付近のHorse Guards Paradeにて開催された。

 ロンドン五輪のビーチバレー競技は2012年7月28日から開催された。これに先駆け、同年6月にはエリザベス女王の即位60周年を祝う式典であるダイヤモンド・ジュビリーが開催されている。競技会場の設営は式典後でないと開始できないという制約のなか、約45日という短期間で全ての会場準備を完了した。これを実現したのは、事前段階での十分な検討と関係者の理解の一致があったからこそと言える。

Horse Guards Paradeの外部の様子。施設の仮設感と日常との対比が印象的だ(資料:Arup)
Horse Guards Paradeの外部の様子。施設の仮設感と日常との対比が印象的だ(資料:Arup)
[画像のクリックで拡大表示]
オーバーレイ工事中のHorse Guards Parade。約1万5000の観客席はすべて仮設で構築されている。ロンドンの歴史を背景とするダイナミックな映像を世界に配信するため、あえて水辺ではなくこの敷地が選定された(資料:Arup)
オーバーレイ工事中のHorse Guards Parade。約1万5000の観客席はすべて仮設で構築されている。ロンドンの歴史を背景とするダイナミックな映像を世界に配信するため、あえて水辺ではなくこの敷地が選定された(資料:Arup)
[画像のクリックで拡大表示]