「BIMレベル3」とは何か

 日本と海外のBIM普及における差異を引き起こした原因の2つ目は、日本において、BIMの成熟度を測る尺度が曖昧であることが挙げられる。

 英国では、段階を経たBIM導入を推進するために、各組織もしくは各プロジェクトリーダーが参照すべき「BIM成熟度モデル」を発表している。くさび形の横軸がBIM導入の段階を、縦軸がBIMの成熟度を表している。

英国政府が2016年までの達成目標として掲げたのが、この成熟度モデルにおけるBIM Level 2であり、次の目標であるBIM Level 3の実行に必要な新たなガイドラインは、目標期間とともに発表される予定である(資料:Bew-Richards BIM Maturity Model)
英国政府が2016年までの達成目標として掲げたのが、この成熟度モデルにおけるBIM Level 2であり、次の目標であるBIM Level 3の実行に必要な新たなガイドラインは、目標期間とともに発表される予定である(資料:Bew-Richards BIM Maturity Model)
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 Level 0は2D図面を介した従来の設計プロセスを、Level 1は 3Dモデルを限定的に取り入れた設計プロセスを示す。Level 2でプロジェクト関係者が各専門分野のBIMモデルを互いに共有・参照することを目指し、Level 3で初めて、プロジェクト関係者が1つの統合モデルにアクセスして設計を進めるという理想的な環境が整う。

 BIM普及の成熟段階を客観的に把握できることから、この「BIM成熟度モデル」は英国国外でも広く参照されている。日本では、いかにBIMを推進しようとも、組織が、社内業務の効率化を目的として「精巧な3Dモデル」作成にのみ労力を注いでいる事例が多く見られる。この場合、BIM活用はあくまで BIM Level 1(= 限定的な3Dモデルの利用)に留まっているということになる。

 日本におけるBIM普及を次の段階へ移行するためには、各社が積み上げてきた技術資産を、企業間のコーディネーションに役立てる試みが必須である。特定のソフトを扱うオペレーターだけではなく、組織・専門分野の枠組みを超えて、設計の流れと情報を管理する「BIM コーディネーター」の需要も、今後増えていくことが予想される。