“今どきBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を導入しないわけにはいかないだろう”と体面を保ちながらも、その実、精巧な3Dモデルとの違いが不明だったりしないだろうか? BIMという未知の大海の中で自分たちがどのような位置にいるのか不安ということはないだろうか? 海外の事例を参考に、BIMの疑問点を解く一助となる情報を、BIMコーディネーターから解説する。(菊地 雪代/アラップ)
行政主導でのBIM導入が遅れている日本では、2009年が BIM元年と言われて以来、各社が組織単位で自発的にBIM導入を担う「孤立BIM」現象が進行してきた。BIM導入が進む海外各国が、BIMを「設計のプロセス」として捉える一方で、日本では未だ「BIM = 精巧な3Dモデル」という活用事例が多く見られる。この差異は何から生じているのであろうか?
その原因の1つは、BIM元年とされた09年の時点から現在まで、業界における明確な達成目標が共有されていないことだと考えられる。
国家戦略としてBIM導入を推進している英国では、11年、英国の公共物件は、16年までにすべからく「コラボレイティブ3D BIM(=BIM Level 2)」を義務付ける、という号令がかかった。それと同時に英国内閣府は、達成すべきとする BIMの実行に必要なガイドラインを定め、以降数年単位で更新している。
16年までに、と定められたこの目標の達成度は公開されていないが、3月に発表された16年度英国内閣府予算案には既に、BIM Level 3への移行を牽引する、新たなガイドライン作成の意図が盛り込まれていた。英国の場合、建設事業の40%が公共物件である。政府は、自らが BIM 導入による最大の受益者であるとの認識から、強力なトップダウン・アプローチを取ってきたという背景がある。
また、サルフォード大学(University of Salford)や ミドルセックス大学(Middlesex University)をはじめとした教育機関がBIMマネジメント学科を設けており、企業は、毎年一定数の社員にその学科を履修させる様子もうかがえる。英国では、BIMは組織単位で戦略的に導入されており、日本のように、特定のソフトを扱う特定のスタッフが抜けてしまうと、社内のBIM係がいなくなる、といった段階でないことは明らかである。