廃墟を再生したロイヤルオペラハウス

 1862年から66年にかけて、E.M.バリーによって建てられた、ロイヤル・オペラ・ハウスは、1942年に戦争の爆撃によって破壊され、それ以降は廃墟と化していた。それを今回は改修し、オープンエアーの劇場とした。夏には1000席ほどが設置され、オペラ、ダンス、演劇、コンサートなどが開かれる。

 このように様々なイベントに対応できるのは、機械化されたステージとERES(Electronic Reflected Energy System)というシステムによる。このシステムを導入することによって、残響時間や音質を室内コンサートホールのように調整することを可能とした。現代的な設備が地中海の歴史的なサイトと融合した形である。

イベント用に客席が設営された劇場。イベントがない時は、公共の広場のように利用されている(写真:Michel Denance)
イベント用に客席が設営された劇場。イベントがない時は、公共の広場のように利用されている(写真:Michel Denance)
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劇場の全景。遺跡のような雰囲気も残している(写真:Michel Denance)
劇場の全景。遺跡のような雰囲気も残している(写真:Michel Denance)
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 このシティー・ゲート・プロジェクトは、計画が持ち上がってからなかなか進まなかったため、結果としてピアノ氏は何度も敷地を訪れることになったという。折り畳まれたメモ用紙、緑色のフェルトペン、メジャーを持ってこの地を歩き回ってメモを取り、「光が石と戯れるようなテクスチャーの建物」を目指したそうだ。

プロジェクト概要

  • 発注者: Grand Harbour Regeneration Corporation
  • 設計者: Renzo Piano Building Workshop
  • 構造、建築設備、音響設計: Arup
  • 規模: 敷地約4万㎡、議会場約7000㎡、劇場約2800㎡
  • 総工費:約95億円
菊地 雪代(きくち・ゆきよ)
菊地 雪代(きくち・ゆきよ) アラップ東京事務所アソシエイト/シニア・プロジェクト・マネージャー。東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻修了後、設計事務所を経て、2005年アラップ東京事務所に入社。一級建築士、宅地建物取引主任者、PMP、LEED評価員(O+M)。アラップ海外事務所の特殊なスキルを国内へ導入するコンサルティングや、日本企業の海外進出、外資系企業の日本国内プロジェクトを担当。