あえて狭めた城壁の門
堀と城壁に囲まれ、街全体が要塞となっているバレッタ市。堀に架かる橋は、時代を経るごとに繰り返し拡張され、当初の形と機能を失い、橋というよりは広場と化していた。ピアノ氏は16世紀につくられた当初の寸法にすべく、増築部分を取り除くことに注力した。これによって、通行人は本来の橋を渡るような感覚を取り戻し、堀や要塞の眺望を得られることになった。
バレッタ市への門は、当初は城壁を貫通するトンネルのようなものだったと考えられている。それが時を経るごとに改変され、50年前の改修では城壁を32mも取り壊して当初の姿とは全く異なったものになってしまった。
よって、今回のプロジェクトの第一目的は、城壁の奥行きや力強さを復元するために、都市へ通ずる入り口を狭く戻すことだった。もともとの城壁と今回の工事で追加した城壁との境目は、60mm厚の鉄の「刃」を挿入することによって明確に分けている。
かつてあった堀の底には、改修後に植栽が施された。一時期は駐車場として利用されていたが、それらを撤去し、散策に最適な場所となっている。歴史的な景色を背景に、オープンエアのイベントもここで開催することができる。