多様な分野で活用、VRは身近な技術に
音響チームの有無に関わらず、複数の事務所でVRの有用性を認識するエンジニアが増えている。視覚・聴覚を連動した没入型シミュレーションを活用できそうな分野は多岐に渡り、それぞれが自発的にVRに取り組んでいた。
これを受けて17年3月、香港事務所はイーストアジア・リージョンの担当スタッフを集めて「VRトレーニング」を開催した。各種VRゴーグルを比較・体験するほかに、iPad を介して平面図から立体的に建物を表示するアプリ(ArupREAL:社内開発)、解析結果をスタディ模型上に投影するソフト(Oasys Submerge:社内開発)、ゲーム開発エンジンのUnityなどを用いる可視化の手法を共有することで担当者間の連携を強めた。
東京事務所でも、VRゴーグルを用いたワークショップを行った。3Dモデルを扱うことに慣れているスタッフがVRのスケール感に驚く一方で、そうでないスタッフは映画やゲーム感覚で、足音は響かないか、触ったものを動かせないか、自分の位置を知るマップを表示したいなど、素直な感想を口にした。このようなワークショップで得られるフィードバックが、設計やクライアントとのコミュニケーションのヒントになる場合もある。
アラップでは、VRは次第に身近な技術として浸透しつつある。ビジネス・リージョンごとに担当者の連携を強化し、その担当者たちが各事務所でエンジニアのサポートに当たる体制を整えている。同時に、舞台設計のライティング・デザイン、群衆流動シミュレーションのVR体験(MassMotion:社内開発)、施工現場の遠隔管理など、視覚・聴覚を連動した没入型シミュレーションは、多様な分野で実用化が試みられている。
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