音響設計のプロセスを「可聴化」

 アラップの音響コンサルティングチームは、ストーラーホールの設計に当たり、可聴化スタジオの「SoundLab」を使用した。SoundLabは、複数のアラップ事務所が所有しているシミュレーションスタジオだ。体験者の周囲に設置した複数のスピーカーから音源を立体的に再生することで、設計中の仮想の音響環境を、その空間内にいるかのように体験できる。

アラップのSoundLabスタジオ(写真:©Arup)
アラップのSoundLabスタジオ(写真:©Arup)
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 音響エンジニアは通常、発生した音や反響音の波が観客席に広がる様子を予測するために、コンピューター上でシミュレーションを行う。その際、スクリーンに表現された平面の図から空間の音響性能を読み取るには、高度な専門技術が必要になる。そこでこのプロジェクトでは、SoundLabでシミュレーション音源を「可聴化」し、クライアントと設計チーム全体がよりダイレクトに完成像を共有する方法で設計を進めた。

SoundLabワークショップ(写真:©Arup)
SoundLabワークショップ(写真:©Arup)
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 名門音楽学校のメーンホールにふさわしい音響性能と遮音性能を実現したストーラーホールは、「非の打ちどころがない」(acoustically immaculate)として、クライアントのチータム音楽学校から評価されている。完成後に行われた演奏を収録した音源は現在、SoundLabの共有ライブラリに保存されており、アラップの他事務所からでも今後の設計の参考にすることができる。