Green Envelopeが過密都市を救う
いま改めて緑化への取り組みが加速している。その背景にあるのは、サステイナビリティーに対する意識の変化ではないかと私は考える。これまでは、消費エネルギーをいかに減らすか、ということが建築の命題であった。少ないエネルギーで長生きする、いわば“建築の健康”こそがサステイナブルと考えられていた。しかし、利用者である私たち人間が快適に、健やかに過ごせなければ、その健康も長くは続かない。視点は、“人間の健康”へと移りつつあるのではないだろうか。現に米国では、緑が利用者の心身に与える効果が、価値として高く評価されている。
いかにして過密化する都市の中に緑を取り戻し、多様な生物と共存するか。それは“人間の健康”を考えるうえで、大きなテーマの1つだ。そして、おそらくその答えは、屋上緑化・壁面緑化という言葉でくくられるものではない。建築のかたちは、植物にとって地形となり得る。崖に草が生え、丘に木が茂り、窪みに鳥が宿るように、建築のつくり出す地形が都市のBiodiversity(生物多様性)の地盤となる日が来るかもしれない。
アラップ東京事務所/ファサードエンジニア