種から育てる緑化壁でコスト抑制

 とはいえ、日本の不動産市場で緑化は高く評価されないのが現実だ。緑化を採用するためには、まずはコストを抑える必要がある。高いメンテナンス性も欠かせない。これまでの壁面緑化の抱える問題を改善すべく、アラップは外装システムの開発に取り組んでいる。

アラップが開発した緑化壁システム「Wild Screen」。発泡アルミとリサイクル材の緑化基盤材、自動潅水システムで構成する。軽量で取り付けも簡単だ(資料:Arup)
アラップが開発した緑化壁システム「Wild Screen」。発泡アルミとリサイクル材の緑化基盤材、自動潅水システムで構成する。軽量で取り付けも簡単だ(資料:Arup)
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「Wild Screen」のモックアップ。種から自然に発芽して根付くため、メンテナンス性、耐久性が高い。複数種の種をまいて、植生の違いを楽しむことも(写真:Arup)
「Wild Screen」のモックアップ。種から自然に発芽して根付くため、メンテナンス性、耐久性が高い。複数種の種をまいて、植生の違いを楽しむことも(写真:Arup)
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 自社開発の緑化壁システム「Wild Screen」(ワイルド・スクリーン)は、汎用の緑化基盤材と発泡アルミで構成された軽量のパネルユニットだ。一般的な外装化粧材と同様のつくりとしているため、通常の外装工事の中で取り付けができ、特殊な施工技術は必要ない。施工性の高さもさることながら、このシステムの最大の特長は、植物を種から育てるという点である。緑化壁の植物は、苗から育てられるものがほとんどだ。冒頭のサンフランシスコ近代美術館でも現場で1万5000株の苗が植えられた。

 ワイルド・スクリーンは基盤材に種をまいた状態でユニット化される。植物は基盤材で発芽し、発泡アルミの孔に根付いていく。苗を植える手間がないうえ、植物の定着度は高くなり、メンテナンス性も耐久性も向上する。複数の種をまいておけば、自然の摂理に基づき、より環境に適した植物が繁茂することになる。同じパネルでも設置場所の方位や環境によって異なる植生が楽しめるかもしれない。