限られた敷地面積による制約、またはアメニティー要素として、近年、壁面緑化を検討することが多くなっているのではないだろうか。建築を緑化することのベネフィットは何か?費用対効果はいかほどか?今回は、ファサード・エンジニアが、昨今の壁面緑化事情について報告する。(菊地 雪代/アラップ)

 3年に及ぶ大規模拡張工事を終え、5月14日に再オープンを迎えたばかりの米国・サンフランシスコ近代美術館。マリオ・ボッタ設計の既存建物と背中合わせに建てられた新館は、ノルウェーとニューヨークを拠点とする設計事務所、スノヘッタの設計によるものだ。特徴的なのは、サンフランシスコ湾の水面に着想を得たという波打つファサードである。FRPで構成されたこの波打つ外装のエンジニアリングに加え、アラップは照明と昼光のデザイン、音響のコンサルティングも担った。

サンフランシスコ近代美術館の外観。外装材として用いられたFRP(繊維強化プラスチック)は一般的に可燃性の材料であるが、今回のために米国基準の防火性能を備えたFRPが開発された。打ち込まれたシリカ鉱物によって、日の光を受けてキラキラと光るそのさまは、まるで白い波のようだ(写真:Arup)
サンフランシスコ近代美術館の外観。外装材として用いられたFRP(繊維強化プラスチック)は一般的に可燃性の材料であるが、今回のために米国基準の防火性能を備えたFRPが開発された。打ち込まれたシリカ鉱物によって、日の光を受けてキラキラと光るそのさまは、まるで白い波のようだ(写真:Arup)
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緑化壁が45m続くテラス。デザインを手掛けたのは現地の専門家、Habitat Horticulture。1万5000株の苗が植えられている(写真:Arup)
緑化壁が45m続くテラス。デザインを手掛けたのは現地の専門家、Habitat Horticulture。1万5000株の苗が植えられている(写真:Arup)
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 一見すると緑化とは無縁のように見えるこの建物だが、実は彫刻を展示するテラスに巨大な緑化壁が設けられている。高さ9m、長さ45mの緑化壁は、米国内最大の規模である 。現地の専門家がデザイン、エンジニアリングを手掛け、カリフォルニア原産種を含む全37種の植物が植えられた。