TFPて何?

 まず、免震装置の違いがある。日本では天然ゴム系積層ゴム(NRB)や鉛プラグ入り積層ゴム(LRB)など、ゴム系の免震装置が主流である。一方、米国では、下図に示すような、振り子支承が入れ子構造となっているTFPと呼ばれる装置が主流である。このプロジェクトでも、126台ものTFPが使用されている。

TFPの概念図(上)と実際の外観写真(下)  (資料:©Arup)
TFPの概念図(上)と実際の外観写真(下) (資料:©Arup)
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SFP(Single Friction Pendulum、上段)、DFP(Double Friction Pendulum、中段)、TFP (Triple Friction Pendulum、下段)の概念図と履歴ループ (資料;©Arup)
SFP(Single Friction Pendulum、上段)、DFP(Double Friction Pendulum、中段)、TFP (Triple Friction Pendulum、下段)の概念図と履歴ループ (資料;©Arup)
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 日本にも振り子支承と呼ばれる製品はある。が、これらの製品は滑り面の摩擦係数が1種類しかないためSingle Friction Pendulum(SFP)と呼ばれる。一方、TFPは、4面ある滑り面のうち内側の振り子支承の上下滑り面の摩擦係数だけが同一で、摩擦係数が3種類あることからTriple Friction Pendulum(TFP)と呼ばれる。

 TFPは、SFPのメリットである(1) 周期が建物質量の影響を受けない、(2) 免震層の偏心が生じにくい、(3)セルフ・センタリング機能がある、(4)フェイル・セーフ機能が免震装置自体に組み込まれている、に加え、SFPにはない(5)滑り面の半径が2種類あるため要求性能に応じた調整が可能、というメリットを持つ。

 一方で、いくつかの問題点もある。(1)上下面の平行度が高い精度で求められる(柱頭免震には不向き)、(2)スティック・スリップ現象(滑りに伴い摩擦係数が不連続に変化する現象) が見られる、(3)1社しか製造会社が存在しない、(4)引き抜き抵抗能力がない、(5)実績がゴム支承ほど多くはない、などである。

 コストはゴム系装置とほぼ同等であり、今後、日本での使用も期待される免震装置である。