スチールパネルのシェル構造

 さて、日本ではこのようなシェル構造の自在な曲面を実現するためには鉄筋コンクリートでつくられることが多い。アーネム中央駅も当初はコンクリートで計画され、その厚みは300mm~700mmだった。

 しかし、入札が不調になり様々な変更をしていくなかで、施工者側から、「壁から上の部分を鉄板のモノコック(外板に応力を受け持たせる構造)にした方が、施工性、コスト、時間の点で勝る」との提案があり、鉄骨造に変更になった。ここでは造船の技術が使われ、オランダの北部の商工業都市であるフローニンゲンにて、スチールパネルが製造された。

建築の形状自体が利用者を誘導するような形となっているため、サインは最小限となっている。照明、階段、スロープなどが行き先案内の役目をしている(写真:Ronald Tilleman)
建築の形状自体が利用者を誘導するような形となっているため、サインは最小限となっている。照明、階段、スロープなどが行き先案内の役目をしている(写真:Ronald Tilleman)
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上空から見たアーネム中央駅。街の中心部に位置する様子がわかる(写真:Hufton+Crow)
上空から見たアーネム中央駅。街の中心部に位置する様子がわかる(写真:Hufton+Crow)
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 1996年の設計開始から、設計がデジタル化されていく時代や建設費が高騰した時代を経て、アーネム中央駅はその時代ごとの精神や挑戦を取り込んできた。今、アーネム市だけでなくオランダのランドマークとなったが、今後も鉄道ネットワークの基軸となるプロジェクトだと言われている。

アラップの発表資料(英語)

プロジェクト概要

発注者: ProRail, Ministry of Infrastructure & the Environment, the Municipality of Arnhem
Delegated principal: ProRail

マスタープラン・フェーズ:

  • 設計者: UNStudio
  • 構造エンジニアリング,交通計画: Arup

設計・仕様決定フェーズ:

  • 構造エンジニアリング: Arup (public transport terminal), Van der Werf & Lankhorst (bus station, car park, office square)
  • MEP: Arcadis
  • 火災安全設計: DGMR Bouw BV
  • 公共交通ターミナル照明: Arup
  • 公共空間照明: Atelier LEK
  • サイン計画: Bureau Mijksenaar
  • 建築仕様: ABT
  • ランドスケープ: Bureau B+B stedebouw en landschapsarchitectuur
  • デフィニティブ・デザインまでのプロジェクトマネジメント: Arcadis

歩行者トンネルのエンジニアリングと建設:

  • 施工者: Besix-Welling
  • 入札フェーズ施工者: Arcadis

エンジニアリングと建設 フェーズ 1: 歩行者トンネルと公共交通ターミナル

  • 施工者: construction consortium BAM Ballast Arnhem Centrum VOF (BBB, BAM & Ballast Nedam)
  • 構造エンジニアリング、照明、環境: Arup
  • MEP: BAM Techniek, Unica

エンジニアリングと建設 フェーズ 2: 公共交通ターミナル

  • 施工者: construction consortium OV-Terminal Arnhem (BCOVTA, BAM & Ballast Nedam)
  • 構造エンジニアリング: BAM Advies & Engineering, ABT
  • MEP: BAM Techniek, Unica

菊地 雪代(きくち・ゆきよ)
菊地 雪代(きくち・ゆきよ) アラップ東京事務所アソシエイト/シニア・プロジェクト・マネージャー。東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻修了後、設計事務所を経て、2005年アラップ東京事務所に入社。一級建築士、宅地建物取引主任者、PMP、LEED評価員(O+M)。アラップ海外事務所の特殊なスキルを国内へ導入するコンサルティングや、日本企業の海外進出、外資系企業の日本国内プロジェクトを担当。