「クラインの壺」に着想を得る

 UNスタジオが駅の形態で着想を得たのは、「クラインの壷」である。クラインの壷とは、ドイツの数学者、フェリックス・クラインが考案した、境界がなく表裏の区別もない曲面である。乗り換えホールについても、内部と外部の区別をなくしたところ、柱や壁などの構造体に邪魔されることなく人々が移動できる空間となった。結果的に、乗り換えホールは都市の中に溶け込んで周囲と一体化したような視覚的、物理的な開放感を持った。

ツイストした壁が分岐しながら広がり、一方では乗り換えホールへとつながり、もう一方で別空間を形づくっている(写真:Hufton+Crow)
ツイストした壁が分岐しながら広がり、一方では乗り換えホールへとつながり、もう一方で別空間を形づくっている(写真:Hufton+Crow)
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 有機的かつオープンな空間は、人々を直感的に動かす。地下の駐車場には、階段室と一体となった空間を通してトップライトから光が差し込み、人はその明るい方へと自然と向かう。トロリーバスを利用する人は、気付かない程度の緩いスロープを降りて行くとその乗り場にたどり着く、といった具合だ。

トロリーバスのターミナル部分(写真:Hufton+Crow)
トロリーバスのターミナル部分(写真:Hufton+Crow)
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