60度の急傾斜地に立つロッジ

 このロッジは、最大の傾斜角60度の斜面に張り付くように建設されており、スラブを支える長さの異なる細い木柱は、最長で9mに及ぶ。素晴らしい景色を邪魔することが無いよう、床下で木のブレースが斜行する姿は、南アフリカの投入堂(なげいれどう)と言ったところか。

 柱やブレースが接地する部分には、スチールのプレートが配置され、岩に700mm埋め込まれてエポキシ樹脂で固定されている。岩とブレースが成す角度が異なっても対応できるようなデザインとなっている。この場所でコンクリートを使用するのは制約が多く困難なため、コンクリートの使用を最小限にし、柱の建て方を容易にする方法が採用された。

敷地調査はまさしく未開の茂みの中を這って進み、建設が可能かを確かめた。夕方の打ち合わせは、キャンプファイヤーを囲んで行われたこともあったそうだ(写真:Arup)
敷地調査はまさしく未開の茂みの中を這って進み、建設が可能かを確かめた。夕方の打ち合わせは、キャンプファイヤーを囲んで行われたこともあったそうだ(写真:Arup)
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柱とブレースが接地する基礎部のアップ (写真:Arup)
柱とブレースが接地する基礎部のアップ (写真:Arup)
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基礎部検討時のスケッチ(資料:Arup)
基礎部検討時のスケッチ(資料:Arup)
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 ゲストルームは6カ所に柱が配されている。ファサードは、鉄製のマリオンによってガラスパネルを支える形となっている。このガラスは引き戸となっていて、開放することで内部とバルコニーが一体となる。

建設のために刈り取られた建物周囲の植物の茂みは、半年後には再生し、あっという間に建物と周辺環境をぼやかし、なじませる役割を果たす(写真:Arup)
建設のために刈り取られた建物周囲の植物の茂みは、半年後には再生し、あっという間に建物と周辺環境をぼやかし、なじませる役割を果たす(写真:Arup)
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