自然換気促す「リボン・キャノピー」

 足元のキャノピーは、大きくうねり、その形態から「リボン・キャノピー」と呼ばれている。キャノピーの端部は、アーチ状に大きく開いており、これが集風の役割を果たしてキャノピー内の自然換気を促している。また、キャノピーに降った雨水は、谷間状になっているところを通って集められ、外構の散水に使われる。

キャノピーの下には、レストランやバーが集まる。タワーに入っているJWマリオット・ホテルは、フィリップ・スタルクがインテリア・デザインを担当し、ハイセンスで高級感のある、話題の場所となっている(写真:Franklin Kwan)
キャノピーの下には、レストランやバーが集まる。タワーに入っているJWマリオット・ホテルは、フィリップ・スタルクがインテリア・デザインを担当し、ハイセンスで高級感のある、話題の場所となっている(写真:Franklin Kwan)
[画像のクリックで拡大表示]

 リボン・キャノピーは複雑な構造に見えるが、原則はボールト屋根の連続である。キャノピーの平均高さは地上30m。支柱は上端で2股に分かれたY字形をしている。キャノピーの梁と、梁間をつなぐ小梁はボックス形状になっており、水平力に対する剛性を高めている。

キャノピーの概念図。大きく開いた端部から風を内部に取り込み、また内部の暖まった空気を高い天井部分から排出する。キャノピーの羽板は太陽光を効率良く遮るような角度に調整した(写真:Arup)
キャノピーの概念図。大きく開いた端部から風を内部に取り込み、また内部の暖まった空気を高い天井部分から排出する。キャノピーの羽板は太陽光を効率良く遮るような角度に調整した(写真:Arup)
[画像のクリックで拡大表示]

 完成後、サウス・ビーチでは様々なイベントも行われているが、さすがに世界の先端を行くシンガポールだと思われるのが、シンガポール健康増進局(Health Promotion Board)が開発事業者のサウス・ビーチ共同企業体と一体となって、スポーツイベントを開催している点だ。

 世界中で健康に関心が高まるなか、「職場から始める、より健康なライフスタイル」と銘打って、キャノピーの下でフィットネス・クラスが行われたり、近隣でフットサルが開催されたりする。終業後の1時間程度、頻繁にイベントが予定されており、ネットから簡単に予約できる。ビジネスパーソンたちが、キャノピー下のバーに集まることも可能だが、健康的な集まりがご時勢である。

柱頭部と接合される部分では梁せい最大950mm、キャノピーの頂部では梁せい最大600mmと、そのモーメントによって梁せいを変えて、合理的かつ伸びやかな動きのある形状としている(写真:Arup)
柱頭部と接合される部分では梁せい最大950mm、キャノピーの頂部では梁せい最大600mmと、そのモーメントによって梁せいを変えて、合理的かつ伸びやかな動きのある形状としている(写真:Arup)
[画像のクリックで拡大表示]