ロンドンの歴史的建造物でも採用

 もう1つ、CCFを採用した事例を紹介したい。2016年、ロンドンに竣工した「1 New Burlington Place」は、歴史的建造物に指定された建物のファサードを保存し、新たにオフィスと店舗の複合施設に改修したプロジェクトである。アラップはファサードエンジニアリングを担った。

1 New Burlington Placeの路地側外観。外壁面が鉛直方向に大きく湾曲している。(写真:Paul Carstairs/Arup)
1 New Burlington Placeの路地側外観。外壁面が鉛直方向に大きく湾曲している。(写真:Paul Carstairs/Arup)
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 通りに面した2面は、1920年代のネオクラシック様式を保存し、裏側の2面をガラスカーテンウオールに刷新した。圧迫感を低減し、路地に光を多く取り込むため、外壁ラインは鉛直方向に大きく弧を描いている。

 計画当初に検討したのは、ダブルスキンだった。しかし、ロンドン市内の事業採算を考えれば、キャビティによる床面積の減少は、致命的な痛手となる。そこで、選択されたのがCCF。キャビティの奥行きは通常のダブルスキンの半分以下、225mmに抑えている。この先進的な取り組みが評価され、World Architecture News Awardsのファサード賞も受賞した。

 200 George Streetでは透明だったアウタースキンだが、ここでは異なる試みを行った。アウタースキンのガラスに遮蔽性能を与えれば、ブラインドが担う日射量を低減できる。結果として、キャビティ内の温度上昇が抑えられるうえ、外皮全体の遮蔽性能も高めることができる。

 アウタースキンの遮蔽として用いたのは、Low-Eガラスとセラミックプリントである。Low-Eガラスといっても、通常のように複層ガラスとして使うのではなく、合わせガラスとして使用する。

 キャビティ内の熱をなるべく外に伝えるためには、アウタースキンの断熱性能は低くなくてはならない。複層ガラスで高い断熱性能を発揮するLow-Eガラスも、合わせガラスにすれば膜のない透明ガラスと同じ断熱性能となる。Low-E膜の遮蔽の機能のみを利用するのだ。