温度上昇の影響は?

 キャビティを密閉したCCFは、いわば大きな複層ガラス。断熱性能がダブルスキンに比べ高いことは一目瞭然である。では、日射遮蔽性能はどうだろうか。

 キャビティ内のブラインドで日射を遮蔽する。これは、ダブルスキンとCCFに共通する基本方針である。ブラインドが吸収した日射は熱として再放射され、キャビティ内の空気の温度を上昇させる。ダブルスキンは、アウタースキンに開口を設け、換気を行うことで、この熱を排出するという仕組みである。

 一方のCCFは、排熱の仕組みを持たない。温められた空気をキャビティ内に閉じ込めてしまう。ここで、多くの方が懸念されるのは、キャビティからの熱伝導による負荷と輻射熱の影響だろう。

200 George Streetの外装概要。高透過ガラスのアウタースキン、木製ブラインド、アルゴンガス入りLow-E複層ガラスのインナースキンで構成される。日射負荷が小さいため、ペリメーター空調には輻射空調が採用された(資料:Arup)
200 George Streetの外装概要。高透過ガラスのアウタースキン、木製ブラインド、アルゴンガス入りLow-E複層ガラスのインナースキンで構成される。日射負荷が小さいため、ペリメーター空調には輻射空調が採用された(資料:Arup)
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 オーストラリアで初めてCCFを採用した200 George Streetでも、同様の懸念が浮上した。そこで、キャビティの温度上昇の影響を明らかにするため、様々な解析と実験を重ねた。

 まず、サッシの影響も含めた机上のモデルで、キャビティからの複雑な熱伝導を解いた。ガラスを介した熱伝導を最小限に抑えるため、インナースキンにはアルゴンガス入りのLow-E複層ガラスが選ばれた。

 さらに、太陽光下の実大実験で、各部の温度や熱量を測定し、机上のスタディーを実証した。結果として、200 George StreetのCCFは、一般的なオフィスの外装(庇などの対策を含む)に比べ、40%以上日射負荷を低減することが確認されている。

 なお、温度上昇したキャビティ内で使用される木製ブラインドについても、耐久性試験を実施した。様々な温度環境を想定した繰り返し試験を行い、少なくとも10年間の使用に耐え得ることを確認した。

 コンペ時の外装コンセプト提案から、この一連のCCFの性能検証までを主導したのは、アラップ・シドニー事務所の環境デザイン(ESD)チームである。アラップは、その他、設備設計、火災安全設計、Vertical Transportation(縦動線計画)、照明設計のサービスも提供した。