座席数と座席間距離

 もう一つの重要なポイントは、座席数と座席間の距離である。席幅を狭めて座席数を最大にした場合、収容人数が増えることにより収益性は上がるかもしれないが、観客の快適性を損なう。また、満員の状態でも楽に観客が出入りでき、災害時に安全に避難できるように座席エリアの通路幅の確保も必要になる。

 さらに、いかなる座席からもフィールドが見渡せるように観客席の視線(サイトライン)を確保することも欠かせない。サッカーフィールドのコーナーエリアや、陸上トラックの外側レーンを、すぐ前の観客たちの頭上を越えて見ることができるように座席の傾斜角度を決める。

 傾斜角度を大きくとると、視線が確保しやすくなり、フィールドまでの直線距離も短くなる。一方で、ボウルの最高高さが高くなるため、高さ制限などの敷地条件との調整が必要になる。スタジアム周囲の歩行者から見るスタジアムの圧迫感にも影響を与える。

観客席のサイトラインの分析例(資料:Arup)
観客席のサイトラインの分析例(資料:Arup)
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観客席のサイトラインの比較例。左図では前席の頭が邪魔をしてコーナーエリアが見えないのに対し、右図ではコーナーエリアのプレーヤーとボールが見える(資料:Arup)
観客席のサイトラインの比較例。左図では前席の頭が邪魔をしてコーナーエリアが見えないのに対し、右図ではコーナーエリアのプレーヤーとボールが見える(資料:Arup)
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