博物館が考える“明日”とは?
この博物館の展示は、来場者に対してたくさんの問いかけをする。我々はどこから来たのか?我々はどこに居てどこに向かうのか?――。答えは各自が様々に思いを巡らせて考えてもらうことを意図している。博物館によれば、“明日”の博物館と名付けた理由はそこにあり、カレンダー上の日付の“明日”を意味するのではなく、たくさんの選択肢から我々が選ぶ意思や行動が“明日”という未来をいかようにもつくっていく、というメッセージだそうだ。
建物形状に影響を与えたという植物・アナナスは、メキシコ南半部や中米一帯のメソアメリカを起源とし、カリブ海沿岸に広がり、コロンブスがヨーロッパに持ち帰ったとされる。アナナスを模したこの建築は、南米とヨーロッパの数百年に渡るつながりを想像させるうえ、種が形を変えて故郷に戻ってきたかにも感じられる。“我々はどこから来て、どこに向かうのか”、という「明日の博物館」の展示の問いかけに対するメタファーのようでもある。
*注1 Anthropocene (ポルトガル語 Antropoceno. ノーベル賞を受けた大気化学者Paul Crutzenの2000年の造語。anthropo(人間)+ cene(新しい)。人間が地球の生態系や気候に大きな影響を及ぼすようになった、18世紀後半の産業革命以降の時期を指す言葉。そのはるか前、農業の起こった時代以降を指す場合もある(英辞郎)。ここでは産業革命以降の、CO2排出量や人口が劇的に増加した時期を示していると思われる。
プロジェクト概要
所在地:ブラジル、リオデジャネイロ
設計者:Santiago Calatrava, Casagrande Engenharia & Consultoria Ltda(構造)、Burle Marx Office (ランドスケープ)
アラップの担当範囲:構造・空調・ファサードのデザイン・レビュー