3.ワークショップで共通の利益を生み出す
レジリエンス戦略づくりのプロセスでは、ワークショップは欠かせない。様々なワークショップによる情報収集や交換、討論によってこそ、革新的なアプローチを生み出すことができるからだ。
100RCではこれを「レジリエンスの配当」と言っている。マイナスの影響を与えかねない状況を有利な条件に転換し、また、CRFで示された複数の要素にプラスの影響を波及させるようなコベネフィットを生み出す戦略の柱を見出す。さらには実効性のあるアクションをデザインし、合意する。
様々な都市の戦略づくりのプロセスを見ると、多様なメンバーが違った角度から課題を見直すところからイノベーションの芽が出始める。異なった立場や専門性をかけ合わせることによって、より強固な計画がつくられていく。
また、その過程では、参加者たちが変化をもたらす当事者となっていく。同時に、市の人的、物質的資源の活用と強化、市民社会の力の結集(エンパワメント)が進む。「リソースフル(余剰性)」「フレキシブル(柔軟性)」「インクルーシブ(包摂性)」といったレジリエンスの資質向上という成果をもたらすことも意図されている。
戦略づくりから実施段階へ
このような共通のアプローチを経て、2016年末の時点で20都市がレジリエンス戦略の策定を完了した。残りの80都市も次々にレジリエンス戦略をリリースし、実施段階に進むことが見込まれる。
実施段階では、継続的にステークホルダーとのパートナーシップを重視しながら、資金調達、実施体制の構築など、より詳細で具体的な計画を行い、事業化していくことになる。コンサルタントやソリューションプロバイダー、事業者、デベロッパーなどのアクターにとってはビジネス機会が広がる。このムーブメントに参加していくためには、都市レジリエンスのフレームワークを理解し、レジリエンスの配当を最大化するという観点からの価値提供が欠かせないだろう。
アラップ東京事務所、シニア・プロジェクト・マネージャー/コンサルタント