各都市で始まったレジリエンス戦略づくり

 現在、アラップは100RCの戦略パートナーとして、22都市のレジリエンス戦略づくりを支援している。

 それぞれの都市の置かれている環境や体制は様々だ。戦略づくりの要は、その都市ならではの強みと弱みを把握し、よりレジリエントな都市になるための、いわば「梃子(てこ)の支点」となるポイントを見出し、関係者が共有していけるストーリーを構築することである。

 その過程で使われている、共通のフレームワークとアプローチは、レジリエンスの向上のための新たな取り組みを志す日本の都市にとっても参考となるものだ。以下で、詳細に紹介したい。

1.都市が備えるべき「レジリエンス」とは何か

 レジリエンスの向上を世界的に展開するための基礎となる概念の枠組みが「都市レジリエンス フレームワーク(CRF)」と「7つの資質」である。

 CRFは、下図に示すように、「健康と幸福」「経済と社会」「インフラと環境」「リーダーシップと戦略」の4つの側面から成る。それぞれ3つの要素で構成している。その都市が様々なショックやストレスに対してレジリエントであるか否かは、これらの要素を総合的に備えているか否かで判断できる。

都市レジリエンスフレームワーク(CRF)。CRF は「都市レジリエンス」の概念を具体化したもので、ロックフェラー財団の支援を得て、アラップが実施した世界の都市の集中的な調査に基づいてつくられた。100RC のレジリエンス計画の基礎となっている。各都市は戦略策定の初期段階からこの共通化されたフレームワークを使用し、その都市の強みと弱点を評価したり、複雑な関係性を理解しながら、焦点を当てるべき領域を見極めるたりする。また、都市間の経験共有や比較検討を促進するツールとしても使われる(資料:左は©100 Resilient Cities pioneered by Rockefeller Foundation、右2点は©Arup)
都市レジリエンスフレームワーク(CRF)。CRF は「都市レジリエンス」の概念を具体化したもので、ロックフェラー財団の支援を得て、アラップが実施した世界の都市の集中的な調査に基づいてつくられた。100RC のレジリエンス計画の基礎となっている。各都市は戦略策定の初期段階からこの共通化されたフレームワークを使用し、その都市の強みと弱点を評価したり、複雑な関係性を理解しながら、焦点を当てるべき領域を見極めるたりする。また、都市間の経験共有や比較検討を促進するツールとしても使われる(資料:左は©100 Resilient Cities pioneered by Rockefeller Foundation、右2点は©Arup)
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 CRFは都市が備えるべきレジリエンスの要素に着目している。レジリエントな都市が備えるべき資質として、省察力(Reflective)、頑強性(Robust)、柔軟性(Flexible)、臨機応変力(Resourceful)、余剰性(Redundant)、 包摂性(Inclusive)、統合力(integrated)の7つを挙げている。

CRFとレジリエンスの7つの資質(資料:©100 Resilient Cities pioneered by Rockefeller Foundation)
CRFとレジリエンスの7つの資質(資料:©100 Resilient Cities pioneered by Rockefeller Foundation)
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 CRFの各要素と7つの資質のいずれの要素もバランスよく優れた状態であれば、都市はレジリエントな状態であると言える。危機に際して幾つかの要素に問題が生じたとしても、情況に耐え、回復できる。平常時でも脆弱であったり、恒常的なストレスによって弱体化したりしている要素は、危機に際して被害拡大のきっかけとなりやすく、回復を妨げる要素となる可能性が高い。