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アラップ・トータルデザインの舞台ウラ

都市の脅威に備えよ、「レジリエント・シティー」への挑戦

アラップ・トータルデザインの舞台ウラ(48)

2017/01/30

災害、犯罪、貧困など、過去もしくは遠い未来の非日常と思われていた危機が、頻発し、新しい「ノーマル」になるといわれている。各都市では危機に対する策を講じているが、そこでは市民からの意見や、文化的な遺産など、都市がすでに持っている「強み」を活かしていくことが重要になりそうだ。都市分野のコンサルタントが、都市のレジリエンスについて解説する。(菊地 雪代/アラップ)

 最近「レジリエンス」(回復力)という言葉を耳にすることが増えている。都市のレジリエンスは災害リスクの削減やマネジメントに関連し、災害からの早期回復の能力と解釈されることが多い。アラップの都市戦略では、その概念を広げ、都市がさらされる様々な危機を迅速かつ柔軟に乗り越え、さらに発展していく能力と定義している。

 都市のシステムは複層的に分断され、時に複雑に絡みあっている。そのシステムをレジリエンスというコンセプトを中心に据え、いかにつなげ、動かしていくか。戦略と手法、行動を計画すること、また、その仕組みづくりが、レジリエントな都市のデザインである。

 デザインの過程で内容を討論し、意思決定を行うのは、その場所に住み、働き、余暇を過ごす人々(ステークホルダー)である。アラップは都市戦略コンサルタントとして、フレームワークの提案やベンチマーキング、GIS(地理情報システム)ベースの分析、コミュニケーションを円滑にするためのビジュアライゼーションなど様々な技術的なサポートを提供。ステークホルダーと協働しながらデザインを進めていく役割を果たしている。

米財団のプロジェクト「100のレジリエント・シティーズ」

 このようなアプローチを世界的に展開している例として、「100のレジリエント・シティーズ(100RC)」のイニシアチブを紹介したい。

【100RC実例-1】ビブロス市(レバノン)は100RCの中でも最も早くレジリエンス戦略策定のプロセスを開始した都市の1つである。ビブロス市はレバノンのなかでは比較的小規模な都市だ。フェニキア人発祥の地として有名なユネスコ文化遺産の都市である。
このような特色を背景として、レジリエンス戦略の柱の1つには「文化遺産、伝統と地域アイデンティティーを誇りとし、守る文化都市」が盛り込まれた。また、「社会的融和と文化的多様性を信奉し、促進する平和都市」という柱は、シリア難民を多数受け入れによるストレスという今日的な問題を踏まえたものである(資料:©Byblos city)

 2013年、米国のロックフェラー財団(*注1)は創立100周年を記念し、「100のレジリエント・シティーズ(100RC)」のイニシアチブを開始した。世界の都市を対象にレジリエンス向上への取り組みを資金面、技術面から支援するものだ。2016年までの3年間で、このプログラムに参加する100の都市が選定された。1000以上の都市が応募しており、世界的な関心の高さがうかがわれる。日本からは京都市と富山市が選ばれた。

 ロックフェラー財団の言葉を借りれば、グローバル化、都市化、気候変動が並行して進む世界において「危機は21世紀の都市のニューノーマルである」。都市は自然災害やサイバー攻撃、経済的・社会的な急激な混乱などの急性のショックばかりでなく、貧困、犯罪や暴力、インフラの不足や不具合などの慢性的なストレスが都市を衰退させる。こうした危機ににも備え、対応する都市戦略が必要とされている。

 メンバーとして選ばれた都市は、100RCの支援を受け(*注2)、共通のプロセスと手法を使いながらレジリエンス戦略を策定する。それぞれの都市に対して、民間企業や研究機関などから成るプラットフォームパートナーや戦略パートナーが、先進的な事例の紹介や調査支援、アドバイスを提供している。


*注1)1913年の創立以来、ロックフェラー財団は「人類の福祉の増進」をミッションとしている。「レジリエンスの構築」と「インクルーシブな経済」を2つのゴールとして設定している。

*注2)100RCの加盟都市は100RCより以下の4種類の支援を受けることができる。
(1)市のレジリエンスをリードする「チーフ・レジリエンス・オフィサー(CRO)」という新たな役職を市政に設けるための資金と助言
(2)レジリエンス戦略策定のための技術支援
(3)ソリューション、サービス提供者、また、レジリエンス戦略の策定と実施を助けることができる民間・公共・NGOセクターから提供されるパートナーへのアクセス
(4)互いに学び、助け合うことを可能とする加盟都市の世界的ネットワークへのメンバーシップ

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