階段手すりにゲーリーらしさ

階段の手すり(写真:Andrew Worssam)
階段の手すり(写真:Andrew Worssam)
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 ゲーリー氏と言えば、ビルバオのグッゲンハイム美術館やディズニー・コンサート・ホールといった、うねる金属仕上げの印象が強く、CCW棟の外観は意外に感じるかもしれない。

 CCW棟では、そのようなゲーリー氏らしさは内部の階段手すりに現れている。荒れ狂ったようなステンレスの手すりが、人の動きやアイデアの移ろいを表現しているそうだ。

内装には、ニュージーランドでつくられたグルーラム(集成材)を使っており、外観とは異なる表情を見せる(写真:Andrew Worssam)
内装には、ニュージーランドでつくられたグルーラム(集成材)を使っており、外観とは異なる表情を見せる(写真:Andrew Worssam)
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楕円形の教室(写真:Andrew Worssam)
楕円形の教室(写真:Andrew Worssam)
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グルーラムの角材を積み上げただけのようだが、小窓の配置や階段との取り合いに繊細さが見える(写真:Andrew Worssam)
グルーラムの角材を積み上げただけのようだが、小窓の配置や階段との取り合いに繊細さが見える(写真:Andrew Worssam)
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複雑なファサードを支えるためにスラブは階ごとに変化し、従って柱も斜行している(写真:Arup and Gehry Partners LLP)
複雑なファサードを支えるためにスラブは階ごとに変化し、従って柱も斜行している(写真:Arup and Gehry Partners LLP)
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 ゲーリー氏は来月(2016年2月)に87歳になる。インタビュー時に中指を立てて応じる態度や、挑戦的な発言にも注目が集まるゲーリー氏だが、建築に表現される「人に対する尊敬」を語り、人間臭さを感じさせる一面もある。それが懐の広さなのだろうか。あらためて見直すと、今にも動き出しそうな恐れを感じたCCW棟のレンガ積みが、職人技を生かしたとても柔らかい風合いのように見えてくる。

シドニー工科大学のホームページ(図面のダウンロードが可能)

アラップの発表資料、日本語

プロジェクト概要

所在地:オーストラリア ウルティモ(シドニー郊外)
発注者:University of Technology Sydney
設計者:Gehry Partners, Daryl Jackson Robin Dyke(実施)
施工者:レンドリース
規模:地下1階・地上12階、1万8413m2(駐車場20台、駐輪場160台)、生徒数約1300人
アラップの担当範囲:構造設計、ファサードエンジニアリング、土木設計、交通コンサルティング
総工費:1.8億オーストラリアドル(約145億円)

菊地雪代(きくち・ゆきよ)
菊地雪代(きくち・ゆきよ) アラップ東京事務所アソシエイト/シニア・プロジェクト・マネージャー。東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻修了後、設計事務所を経て、2005年アラップ東京事務所に入社。一級建築士、宅地建物取引主任者、PMP、LEED評価員(O+M)。アラップ海外事務所の特殊なスキルを国内へ導入するコンサルティングや、日本企業の海外進出、外資系企業の日本国内プロジェクトを担当。