レンガ積みの曲面ファサード

 特筆すべきは、やはりファサードだろう。元々は、シドニーの建築によく見られる、砂岩仕上げのファサードとする予定で、砂岩を双曲面に加工する方法や職人を検討し始めていた。

 しかし、曲面を強調するためにレンガを使用する案が持ち上がった。レンガのエッジ部分が繊細な陰影を生み、趣のある表情をつくり出す。以前、ゲーリー氏はレンガでファサードを構成したことがあったが、CCW棟のように複雑に傾いたレンガ積みをするのは初の試みだった。

うねるレンガの壁と、その壁から突出したアルミの窓枠。陰影がうねりを強調する(写真:Andrew Worssam)
うねるレンガの壁と、その壁から突出したアルミの窓枠。陰影がうねりを強調する(写真:Andrew Worssam)
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 工程やコストを考えても、職人による現場でのレンガ積みはリスクが高い。アラップはレンガ仕上げのプレキャスト(PCa)板や、レンガ調タイルを張った繊維強化コンクリートなど複数の可能性を検討した。このようなオプションを残したまま性能発注による施工者選定を行ったため、調達プロセスは困難を極めた。

レンガの壁の下地。下部にシートメタルを張ったところ(写真:Andrew Worssam)
レンガの壁の下地。下部にシートメタルを張ったところ(写真:Andrew Worssam)
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