リスクを説明する際、数値は重要です。例えば、クルマのシートベルト着用。国土交通省によると、交通事故にあった際のシートベルト非着用者の致死率は、着用者の14倍にも及びます。これを座席位置別にみると、運運転席56.5倍、助手席15.2倍、後部座席4.8倍だそうです。このようにリスクを数値で示されると、漠然と「危ない」と説明されるより、「対策をしなければ」という動機づけになります。

 日経ホームビルダー12月号の特集「それでもやる?軒ゼロ住宅」は、軒ゼロ住宅の雨漏り発生リスクを数値で示しました。住宅瑕疵保険会社が雨漏り事故案件を分析した結果と、本誌の独自調査を組み合わせた試算です。その結果、軒ゼロ住宅は雨漏り発生リスクが通常の約5倍に及ぶことが分かりました。

日経ホームビルダー2016年12月号の特集「それでもやる?軒ゼロ住宅」 (資料:日経ホームビルダー)
日経ホームビルダー2016年12月号の特集「それでもやる?軒ゼロ住宅」 (資料:日経ホームビルダー)
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軒の出がない部位の雨漏り事故発生確率は、軒の出がある部位の約5倍だった (資料:日経ホームビルダー)
軒の出がない部位の雨漏り事故発生確率は、軒の出がある部位の約5倍だった (資料:日経ホームビルダー)
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 「基本的に軒ゼロは採用しない」という工務店は多いと思います。ただ、「どうしても」と建て主が求めた場合は、どうでしょうか。「軒ゼロは雨漏りリスクが高いからやめた方がいいですよ」とアドバイスしたら、その建て主は「この工務店、腕(技術)に自信がないのかな」と誤解されるんじゃないかと心配になるかもしれません。そんな時に「リスクが通常の約5倍ですよ」と数値で説明できれば、建て主の考えを変えるきっかけになるかもしれません。

 それでも採用せざるを得ないケースでは、特別な対策を実施する工務店もあるでしょう。場合によっては、工事費がアップするかもしれません。どう対応するか――。この特集は、建て主と話し合うきっかけづくりに役立つことを狙っています。