この記事をご覧になっている方の大半は、「ZEH(ゼッチ)」という言葉をご存知でしょう。しかし、住宅に関連した仕事に従事していない人にとっては、まだまだ耳慣れない言葉のようです。

 日経BP総研社会インフラ研究所が、日経BPコンサルティングの調査モニター2085人を対象にアンケート調査したところ「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」を「どういうものか知っている」と答えた割合は3.9%にとどまりました。「言葉を見聞きしたことがあるが、内容は知らない」という回答が3.5%で、言葉の認知度は合計しても8%に満たない水準です(「わずか7%、意外と低いZEHの認知度」を参照)。

 日経ホームビルダー11月号の特集「ZEHビルダーはもう要らない?」では、ZEHの普及が必ずしも順調に進んでいない状況に着目。実務者がこれからどのように「ZEH」と付き合っていけばよいのかを探りました。「ZEHというツールが、工務店の武器になっているのか」という疑問点から出発した企画でしたが、現段階ではZEHへの期待感が想像以上に薄いというのが正直な印象です。

日経ホームビルダー11月号の特集「ZEHビルダーはもう要らない?」(資料:日経ホームビルダー)
日経ホームビルダー11月号の特集「ZEHビルダーはもう要らない?」(資料:日経ホームビルダー)
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 本誌では住宅の施工者や設計者などを対象に、ZEHに対する意識を独自に調査しました。例えば、「ZEHビルダーの評価制度は顧客対応の武器になるか」と尋ねたところ、ZEHビルダーとして登録している人も登録していない人も、そろって「そう思わない」という回答が「そう思う」という回答の2倍程度に達しました。

 では、「住宅の実務者は省エネ性能に関心がないのか」と問われれば、決してそんなことはありません。ZEHビルダーの登録制度など「ZEH」を使った営業に対する期待が小さくても、独自に省エネ性能を高める取り組みを重ねる会社は少なくありません。顧客から「ZEH」にしてほしいと求められれば、対応できるように備えている会社は珍しくないのです。「まだまだ世間に普及していないから、ZEHなんてよく知らなくてもいい」と、あぐらをかいていたら要注意です。

 ZEHはまだ普及途上の段階ですが、住宅の省エネ性能を重視していく流れは加速していくはずです。大手住宅会社をはじめ、住宅の省エネ性能を高める取り組みが急速に進んでいます。国もZEHの普及に向けて「エコ」のPRが上手な環境省を加えた新たな枠組みを整えつつあります。2018年以降、ZEHという言葉の認知度が高まるとみるべきでしょう。

 ただ、ZEHだけに頼るのもリスクがあります。ZEHが普及した後に、価格競争に巻き込まれてしまいかねないからです。ZEHという物差し以外にも、顧客から選ばれる強みをきちんとつくっておく。そんなビジョンの大切さを、特集記事では具体的な工務店の取り組みを通じて紹介しています。