長期にわたって議論されてきた民法の改正が、2017年になってようやく成立しました。大きな書店でビジネス書の棚に向かうと、既に改正民法を解説した書籍が数多く並んでいます。ただ、工務店をはじめとした住宅会社に特化して、業務に役立つノウハウを分かりやすく紹介したものはほとんど見当たりません。

 今回の改正民法で建設の仕事に関連する項目としては、「瑕疵」という文言が廃止されて「契約の内容に適合しない(契約不適合)」と言い換えられる点があります。そして、建設した住宅に図面と一致しない契約不適合があった場合には、まずは建設を担った住宅会社に補修を求める権利を、建て主に認めることになります。それでも対応してもらえない状況が生じてから、建て主に代金減額の請求権が発生するのです。

 そのため、住宅会社にとってクレームが生じてから素早く的確に対応する重要性は増す見込みです。契約との整合性を判断しやすくするために、契約内容をより明確にする重要性も高まります。

 工務店をはじめとする住宅会社にとって、民法の改正は契約書や約款などを見直す大きな転換点となるのは間違いなさそうです。しかし、具体的にどう取り組めばよいのかは、まだ分かりにくいのではないかと思います。

 そこで、日経ホームビルダー10月号の特集「重み増す契約書、民法改正の衝撃」では、民法の改正に伴って住宅会社の仕事にどのような影響が及ぶのかを、弁護士などの識者に徹底取材してひも解いていきました。

日経ホームビルダー10月号の特集「重み増す契約書、民法改正の衝撃」(資料:日経ホームビルダー)
日経ホームビルダー10月号の特集「重み増す契約書、民法改正の衝撃」(資料:日経ホームビルダー)
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 特集記事では今回の改正内容を理解しやすくするために、「契約に適合しておらず、建て主に値引きを迫られる」「雨漏り対応を放置して訴えられた」「中古住宅の引き渡し後に異臭がする」といった具体的なトラブルを想定。改正民法下で想定される対応などを示しています。

 加えて、改正民法に備えるうえで役立ちそうな先進的な契約を実現している住宅会社の取り組みを紹介しました。今後の対応策のヒントがつかめるのではないかと思います。建設分野で豊富な実績を持つ弁護士の方々を深く取材した結果をまとめているので、本特集の資料性は高いと信じています。

地面師や保険金詐欺の話題も

 特集の企画に協力していただいた秋野卓生弁護士には、民法の改正に伴って住宅会社がどう対処すべきかを分かりやすく、そして深くレクチャーする「建築版『改正民法』万全準備セミナー」にもご登壇いただく予定です。セミナーは11月30日に開催する予定で、改正民法の施行に向けてしっかり備えておきたい方にお勧めです。

 特集以外では、住宅など不動産に関連した契約や取り引きをめぐる事件性の高い話題もいくつか掲載しました。1つは居住者が契約している火災保険を悪用したリフォーム詐欺の話題を取り上げたリポート「住宅補修に火災保険金を悪用」です。経年劣化を自然災害などによる損傷と偽り、詐欺を働く事業者が増えている実態とともに、その対策に向けた動きを報じています。

 もう1つは、紙の雑誌では、いつも巻末の方にあって、目立ちにくい連載「用語で学ぶ不動産入門」の「こいつは『地面師』か?」と題する記事です。積水ハウスが63億円をだまし取られた「地面師」をテーマに据えました。地面師の被害は大手住宅メーカーに限ったことではないようです。記事では、その手口にはまらないための作法を分かりやすく紹介しています。

 さらに10月号では、資料性の高いデジタルコンテンツを用意しています。これまで冊子にしてお送りしていた「住宅ストック市場年鑑」を、17年からは本誌ウェブサイトからPDFでご提供するように改めました。

 最後にもう1つだけ。日経ホームビルダーでは、雨漏りに関連した注目コンテンツを2つ用意しました。「雨漏りトラブル完全対策セミナー」と書籍「雨漏りトラブル完全解決」です。「軒ゼロ住宅など雨漏り対策が難しい住宅でしっかりとした品質を保つにはどうすればいいか」。そんな悩みを抱えている方に、お勧めの内容となっています。

雨漏りが発生しやすい部位の納め方を、基礎から易しく解説するとともに、軒ゼロやパラペットなど、雨漏り事故が増えている部位の対策も詳説した「雨漏りトラブル完全解決」。10月2日に発行する(資料:日経ホームビルダー)
雨漏りが発生しやすい部位の納め方を、基礎から易しく解説するとともに、軒ゼロやパラペットなど、雨漏り事故が増えている部位の対策も詳説した「雨漏りトラブル完全解決」。10月2日に発行する(資料:日経ホームビルダー)
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 今号も読みどころが満載のラインアップです。ウェブサイトの情報も含めて、ご覧いただければと思います。