熊本地震は、熊本県益城町を中心に木造戸建て住宅に大きな被害をもたらしました。被害状況を取材する中で分かってきたのは、新築も既築も現在の耐震対策ではリスクを抱えているということです。日経ホームビルダー7月号の二つの特集で詳しく解説します。

日経ホームビルダー7月号「続報・熊本地震●『等級2』倒壊の真相」
日経ホームビルダー7月号「続報・熊本地震●『等級2』倒壊の真相」
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 第1特集は「続報・熊本地震 『等級2』倒壊の真相 ~図面を徹底検証~」です。築年数が浅いのに倒壊してしまった木造住宅に注目し、その居住者に協力していただき、図面を基にした徹底検証を試みました。その結果、この住宅は耐震等級2を上回る高い耐震性能を確保していたにも関わらず、倒壊してしまったことが分かりました。

 構造実務者や耐震工学の専門家への取材によって、原因として浮かび上がってきたのは以下の2点です。(1)軟弱地盤による地震動の増幅(2)1階と2階の柱や耐力壁の位置がそろっていない「直下率」の低さ。それぞれ、許容応力度設計や地震応答解析ソフトを使って詳しく検証しています。

 さらに、2度にわたって最大震度7を観測した巨大地震によって、この住宅がどのようなプロセスを経て倒壊に至ったのか、3次元シミュレーションで克明に分析しました。雑誌では掲載できなかった様々なシミュレーションの動画をウェブサイト上で公開しています。

 2本のインタビューも必見です。京都大学教授の五十田博さんは、厳しい条件下でもほぼ無傷で残った住宅に着目し、強さの要因を分析しています。そして、大和ハウス工業の住宅2棟が倒壊した原因を、同社の技術担当者と広報担当者が分析しています。

日経ホームビルダー7月号「特集●耐震性は大丈夫?『81年~00年』住宅」
日経ホームビルダー7月号「特集●耐震性は大丈夫?『81年~00年』住宅」
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 第2特集は「特集 耐震性は大丈夫?『81年~00年』住宅」です。1981年以降に建った新耐震基準の住宅の中には、2000年に示された建築基準法の告示に合致していないものが存在することに注目しました。熊本地震で大きな被害を受けた住宅に、柱と土台などの接合部の金物が2000年の告示に合致していない例があったからです。

 特集では、1981年~2000年の間に建った住宅を耐震改修した事例も紹介。南側に開口部を取り過ぎてバランスが悪くなっていた住宅を見事に改修した例などを取り上げました。

 熊本地震は、新築と既築の両方について、今後の耐震対策を考え直すきっかけになりそうです。なお、本誌では、住宅実務者を対象に耐震基準に関するアンケート調査を実施しています。ぜひ、あなたの意見もお聞かせください。


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