築10年もたたないのに、屋根の野地板が腐朽する──。日経ホームビルダーはそんな悲しい状況を憂い、6月号で「野地板が泣いている」と題する特集を組みました。

日経ホームビルダー6月号の特集「野地板が泣いている」(資料:日経ホームビルダー)
日経ホームビルダー6月号の特集「野地板が泣いている」(資料:日経ホームビルダー)
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 戦後日本の発展の象徴でもあった建物の「スクラップ・アンド・ビルド」。その代表格であった住宅も、今やきちんとした品質を保ち、寿命を長く保てるものが求められる時代に変化しています。

 しかし、長寿命化というお題が与えられても、それを実現するための技術が十分に行き渡っているというわけではありません。今号の特集で扱った透湿ルーフィングは、長寿命化を実現する有力なツールになる可能性を秘めていますが、現段階では技術の普及に苦戦しています。

 それでも、JISの制定や透湿ルーフィングを活用した先進的な住宅建設の取り組みなど、普及拡大に向けた布石は着実に打たれています。誌面を見ていただければ、透湿ルーフィングが持つ大きな可能性を感じるとともに、これまで以上に関心を持っていただけると思います。

 住宅の品質という視点では、構造の質を担保するための仕組みについて、識者が本音をぶつけ合うシンポジウムの内容をまとめたリポート「見直し探る4号特例や新耐震」もまとめました。

 日本弁護士連合会に所属する弁護士たちが企画したシンポジウムで、弁護士たちと国土交通省の建築指導課長、構造設計者などが建築基準法における4号建築物の扱いを熱く議論しています。

 建築確認時に構造審査や一部の検査を省略できる「4号特例」の扱いや、新耐震基準における仕様規定の見直しの必要性について、参加者が現状の課題を交えながら具体的に指摘しています。

 壁量規定で建てられた住宅が他の構造計算を経て建てられた住宅に比べて性能が劣るという指摘など重要な視点が提示されており、現状の構造検討の在り方を考え直す材料になっています。さらに記事では、シンポジウムを通じて浮かび上がってきた将来の制度見直しの行方にも言及しました。

 もう1つ、住宅の品質に関連して、ぜひ読んでほしい記事があります。ニュースの深層「被災半年後に自腹で擁壁補修」です。

 建物本体だけでなく、地盤も住宅品質の大きな決定要因となっています。日経ホームビルダー3月号の特集「地震が暴く危うい擁壁」は、読者の皆さまから大きな反響を頂きましたが、同特集でもクローズアップした安全性に問題を抱える既存擁壁は少なくありません。

 今号のニュースの深層では、こうした擁壁が中小規模の災害などによって倒壊した場合に、復旧や改修を図ることが難しい実情を浮き彫りにするとともに、自治体などによる支援の必要性にも言及しました。

 住宅の品質をめぐるこれら3つの記事だけでなく、日経ホームビルダー6月号では、今まさに実務者が知っておきたい住宅産業界の話題を豊富に掲載しています。

 最後にもう1つだけ。日経ホームビルダーのホームページでは、中段に「“学び”のコラム」の欄を新たに設けました。現在は、「地震・耐震・制振アーカイブス」「マンガで学ぶ顧客対応術」を取り上げています。前者は地震関連の記事が整理され、分かりやすくなっています。こちらにもぜひ1度アクセスしてみてください。